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2019年9月2日月曜日

小児におけるつま先歩きと出生時の特徴との関連性

A Comparison of the Birth Characteristics of Idiopathic Toe Walking and Toe Walking Gait Due to Medical Reasons. J Pediatr 2016; 171: 290-3

はじめに

・小児において, 一時的につま先歩きがみられることは珍しくなく, 数%でみられると考えられている.
・言語障害や自閉症スペクトラム障害がある児などでみられやすいことが知られている一方, 特に神経精神学的に明らかな問題のない児において一時的につま先歩きがみられることがあり, 特発性つま先歩きと呼ばれている.
・特発性つま先歩きは遺伝的要因など様々な原因が考慮されているが, 十分には明らかなとはなっていない.
・つま先歩きに関しては様々な研究が行われているが, 出生時に関連した特徴との関連性は知られていない.






小児のつま先歩きと出生時の特徴の関連性に分析した研究

方法

・オーストラリアでの後ろ向き研究の診療記録レビュー
・2010年1月から2014年12月までの間で外来のつま先歩きクリニックを受診した小児のすべての診療記録は再検討した
 ・この外来クリニックは2010年に設立され, つま先歩きの児の多方面での評価と診断サービスを目的としている
・このクリニックでは児の出生時や医学的情報や発達の情報を確認するために両親へのアンケートを用いている
・一般的なオーストラリアでの周産期のデータは一般的な集団のデータを用いた




結果

・161人の診療記録を再検討し, 123人が対象となった
 ・除外となった38人は出生時のデータが不十分, もしくは診断が確定していなかった

・つま先歩きの児の内訳:
 ・特発性つま先歩き(Idiopathic toe-walking : ITW): 95人 (そのうち男児60人, 63%), 平均5.8歳
 ・既知の医学的理由があるつま先歩き(TWmr): 28人 (そのうち男児19人, 58%), 平均6.1歳
・既知の医学的理由があるつま先歩きにおける, つま先歩きに関連した診断:
 ・脳性麻痺 (3人)
 ・自閉症スペクトラム障害 (20人)
 ・その他の状態 (5人)


つま先歩きと周産期の状態との関連性
・ITWとTWmrはともに一般集団と比べて早産児であった割合が高かった(18% vs 17.9% vs 8.3%)
・ITWはTWmrと比べて介助を要した経膣分娩である割合が低かった (37.2% vs 48.0%)
・ITWは一般集団と比べて以下の割合が高かった:
 ・出生後の特別治療保育室(special care nursery : SCN)やNICUへの入院
 ・低出生体重児




まとめ

・ITWの児は一般集団と比べて, 周産期において低出生体重児や早産児であった割合が高く, 出生後に特別な治療のために入院していた割合も高かった

2018年3月21日水曜日

小児の発熱 Q&A

Question


1. どれくらいから熱があると判断したらよいでしょうか?
2. 発熱と高体温はどのように違うのでしょうか?
3. 熱が下がらない, あるいは高熱が続いていて心配なのですが?
4. 発熱は体にどのような影響があるのでしょうか?
5. 「触って熱がある」と思った場合, どのくらい正確なのでしょうか?
6. 新生児で環境による体温上昇と発熱を区別する方法はありますか?




どれくらいから熱があると判断したらよいでしょうか?


 発熱はとてもよくみられる症状ですが, 一般的に受け入れられた発熱の定義は存在しないです. 現実的に用いられる定義としては
・口腔で測定した体温>38℃
・直腸や鼓膜で測定した体温>38.4℃
というものが知られています.
 日本では腋下で測定した体温が一般的だと思われますが, やはり何℃を発熱とするかということは決まっていません. 腋下で測定した体温は上記のものよりも低くなる傾向があることはわかっています. ただし, 基本的には体温≧38.0℃で発熱していると判断するのがよいかと思われます.
 それより低い体温でも発熱していると考える場合もありますが, 小児では午後や運動後に37℃台となる可能性があることが知られていますので, 過度に発熱を心配してしまう可能性があるため, 発熱はないと考えても基本的には問題ないかと思われます.

 ちなみに体温は1日の中で変動していて, 通常4-5時頃が1番低く, 夕方頃が1番高くなります. また発熱している場合でもこのパターンに従うことが多いです.




発熱と高体温はどのように違うのでしょうか?


 発熱(fever)と高体温(hyperthermia)は同じ意味ではありません.
 発熱は体が体温を上げようとしている反応であるため, 十分に調節されており危険なものではありません(ただし, 発熱の「原因」は危険な可能性はあります). 発熱単独では体温は41℃を上回ることはほぼないと言われてます. 例としては風邪などの様々な感染症や, 自己免疫性疾患など多くの体温上昇を起こす原因でみられます.
 一方, 高体温は正常なメカニズムの体温調節に障害を起こした状態であるため, 調節がうまくいっていないため危険なものとなる可能性があります. 高体温では41℃を超える可能性が, 42℃を超えると様々な臓器に影響を与えるとされています. 高体温の例としては熱中症や悪性高体温が挙げられます.

 ちなみに研修医などには「体温上昇」「発熱」「高体温」は区別して用いるように教えています.




熱が下がらない, あるいは高熱が続いていて心配なのですが?


 発熱のデメリットとしては, 脱水や眠気が強くなるといったことの原因となりえることが知られています. ただし, 上述の通り発熱自体は危険なものではありません.
 熱が下がらない, もしくは高熱であると重症感染症がより心配となるかもしれませんが, どちらも重症感染症を示しているわけではありません. もちろん重症感染症の可能性はありますが, それは発熱の程度が軽い場合でも同様です.

「発熱自体は危険ではないが, 発熱の原因は危険かもしれない. 熱の高さよりも子供がどのように活動しているかの方が重要である」(Moffet's Pediatric Infectious Diseases 5th edition)




発熱は体にどのような影響があるのでしょうか


 感染症に対してはいくつか有益な影響があることが知られています. 例としては以下のようなものが挙げられます:
・白血球運動性が亢進
・いくらかのウイルスや細菌が殺される
 ・淋菌やいくらかのトレポネーマは40℃を超えると殺菌される
・natural killer(NK)細胞の活動性が亢進
・抗菌薬による殺菌能の増強
・インターフェロンの効果が増強
 様々な発熱の効果が知られていますが, 実際に発熱していることにより早く治るなどの経過において有益性であることが示されたことはありません.




「触って熱がある」と思った場合, どのくらい正確なのでしょうか?


 いくらかの研究が知られています. あまり体温を測定した経験がないと思われるザンビアでの研究では陽性的中率39%, 陰性的中率95%であったと報告されています. また, アメリカでの3か月未満の児を対象とした研究では陽性的中率59%. 陰性的中率93%であったと報告されています.
 まとめれば,
・触って熱があると感じる → 熱があるとは限らない(あまり信頼できない)
・触って熱がないと感じる → 熱がない可能性が高い(およそ信頼できる)
ということになります.

Diagnosing fever by touch: observational study. BMJ 1998; 317: 321-30
Fever determination in young infants: prevalence and accuracy of parental palpation. Pediatr Emerg Care 2009; 25: 12-4




新生児で環境による体温上昇と発熱を区別する方法はありますか?


 足と腹部を触って判断するテクニックは知られています.
 足と腹部を触って
・両方の温かさが同じ程度 → 環境による体温上昇
・足が冷たくて腹部が温かい → 発熱と末梢の血管収縮
の可能性を示唆している, とされています. ただし, 新生児の発熱はリスクが高いため, この所見はあくまでも参考程度にとどめるのがよいと思われます.

PEDIATRICS SECRETS 5th edition





2018年1月30日火曜日

母親による触診での発熱の有無の評価

Diagnosing fever by touch: observational study
BMJ 1998; 317: 321-30

触診による発熱の評価の精度を評価した研究
・対象は1-16歳(中央値2歳)の小児
・体温37.8℃以上を発熱と定義
・母親と医学生(2人)が子供の腹部, 前額部, 頸部を触って, 独立して記録. 同時に水銀体温計で腋窩温を測定



結果

・1090人の小児が対象となり, そのうち236人(27%)が発熱していた
・母親は862人の児の評価を行い, 574人(67%)の児が触診で暖かいか熱いと評価された
 ・感度は94%, 特異度は44%であった: 陽性的中率39%, 陰性的中率95%
・2人の医学生は1086人の児の評価を行い, 525人(48%)の児が触診で暖かいか熱いと評価された
 ・感度94%, 特異度67%であった: 陽性的中率49%, 陰性的中率97%
 ・2人の医学生は独立して働いていたが, それぞれの結果はほぼ同じであった



まとめ

・触診において
 ・「発熱がなさそう」 → 実際に発熱がない可能性が高い
 ・「発熱がありそうだった」 → 実際には発熱はないことも多そう
ということが示されました

2018年1月29日月曜日

日齢60以下の発熱している児におけるインフルエンザと細菌感染症のリスク

Influenza Virus Infection and the Risk of Serious Bacterial Infections in Young Febrile Infants.
Pediatrics 2009; 124(1): 30-9

日齢60以下の発熱している児におけるインフルエンザ感染症の有無で細菌感染症のリスクを評価した前向き研究

・日齢60日以下の発熱している児全員を対象とした多施設前向き横断研究
・対象期間: 連続した3回のインフルエンザシーズン
・インフルエンザウイルスの感染状況は迅速検査で決定
・児は血液, 尿, 髄液, 便培養で評価が行われた
・尿路感染症(UTI), 菌血症, 細菌性髄膜炎, 細菌性腸炎を重症細菌感染症(SBI)と定義


結果

・1091人が対象となり, そのうち844人(77.4%)でインフルエンザウイルスの検査が施行された
 ・検査が行われた患者のうち123人(14.3%)が検査陽性
・SBIの有無に関しては844人中809人(95.9%)で判明している:
・809人中95人(11.7%)がSBIに罹患していた
・インフルエンザ検査陰性の症例と比較して検査陽性の症例ではSBI(2.5%)やUTI(2.4%)の有病率が有意に低かった
 ・インフルエンザ陽性群では菌血症, 細菌性髄膜炎, 細菌性腸炎の症例はなかった


まとめ

・インフルエンザの検査陽性患者では陰性患者よりも細菌感染症のリスクは有意に低かった
・しかし, インフルエンザの検査陽性患者であってもUTIの発生は稀ではないため, UTIへの注意は必要である

日齢90以下の発熱している児におけるライノウイルスと細菌感染症のリスク

Rhinovirus in Febrile Infants and Risk of Bacterial Infection
Pediatric 2018 Jan 17

日齢90以下の発熱している児におけるライノウイルス感染症と細菌感染症のリスクを評価した後方視的研究

・発熱しているwell-appearing(元気にみえる)の日齢90以下の小児が対象
・PCRで呼吸器ウイルスについて検査(RVPCR)を行った
・ヒトライノウイルス(HRV)やその他のウイルスの検出状況に応じて, 児は3群に分けられた
 ・HRV陽性
 ・HRV以外のウイルス陽性
 ・ウイルスの検出なし
・細菌感染症として尿路感染症(UTI)と侵襲性細菌感染症(菌血症や髄膜炎)のリスクを評価


結果

・10964人の小児が特定され, そのうち4937人(37%)でPVPCRが行われていた
 ・そのうち2212人(55%)で呼吸器ウイルスが陽性で, 1392人(35%)でHRV陽性であった

細菌感染症のリスク
・HRV陽性群ではHRV以外のウイルス陽性群よりも細菌感染症の頻度は高かった(7.8% vs 3.7%; 相対リスク[RR] 2.12)
・HRV陽性群ではいずれの年齢でもUTIのリスクの変化はなかった
・日齢29-90の児において, HRV陽性群ではウイルスの検出がなかった群よりもIBIのリスクは低かった(2.5% vs 9.1%; RR 0.52)
 ・日齢1-28の児では有意なリスク低下はみられなかった
・日齢29-90の児において, HRV以外のウイルス陽性群ではウイルスの検出がなかった群よりもUTIのリスクは低かった(2.5% vs 9.1%; RR 0.36)


まとめ

・日齢29-90の発熱しているwell-appearingの児では, ライノウイルスが検出された場合には侵襲性細菌感染症のリスクは低下しているかもしれない
・RSウイルスやインフルエンザウイルスにおいても,ウイルスが検出された場合には細菌感染症のリスクが低下することが知られている. ただしこれらのウイルスとは異なり,
 ・HRVでは簡単にウイルスを検出する方法がない
 ・リスクの低下も大きくはない
ことから, 現時点では実臨床に生かすには難しいだろう.

2018年1月27日土曜日

大泉門の大きさと閉鎖

・泉門は線維性の膜で覆われた頭蓋骨の間隙であり, 出生時には6つの泉門が存在する(ただし身体診察で触知できるのは大泉門と小泉門の2つのみ)
・大泉門は泉門のうちで最も大きいもので, 左右の前頭骨と頭頂骨に囲まれた部分

図のうち, Anterior fontanelの部分が大泉門(図は参考文献9から引用)




大きさ

・日本ではひし形の辺の中央での長さを縦横で測定する(縦横の平均値)方法(Elsasser法)が一般的だが, 海外の文献や教科書では対角線を測定する(対角線の平均値)方法(Popich and Smith法1))が用いられることが多いため, 海外の文献を参照する場合には注意が必要
・いずれの方法でも評価の正確性としては違いがないことが報告されている13)














Elsasser法
・出生時の平均値は男児14.8mm, 女児13.9mm6)

Popich and Smith法
・日齢1での大泉門の正常の大きさは0.6-3.6cmで平均2.1cm1)
 ・黒人ではやや大きく1.4-4.7cm5)
・出生時の大泉門の大きさは在胎週数が大きいほど広い傾向がある: ある研究では週数別の大泉門の平均面積は以下の通りだった12)  
 ・在胎週数 28-32週: 113.4mm2
 ・在胎週数 33-36週: 161.7mm2
 ・在胎週数 37-42週: 220.2mm2
・大泉門の大きさと頭囲や骨年齢との間で関連性はない3)
・大泉門の大きさは生後2か月までは拡大する2)4)




閉鎖

・大泉門の閉鎖は個人差が大きいが11), 大泉門閉鎖までの平均時間は出生時の在胎週数に依存する
・男児は女児よりも早く閉鎖するかもしれない7)
・CTで解剖学的に評価した研究では, 大泉門は12か月までに21%, 18か月までで60%, 24か月までで89%が閉鎖していた2)
・日本人での触診での報告では12か月までに50%, 18か月までに80%, 24か月までに99%が閉鎖していた6)
・初期の大泉門の大きさは閉鎖時期の予測因子にはならない3)




大きな大泉門・閉鎖遅延

大きな大泉門
・明確な基準はないが, 以下の基準は示されている10)
 ・生後6か月以下: 5cm以上
 ・6-9か月: 4cm以上
 ・9-12か月: 3cm以上

原因
・頻度の高い原因: 軟骨無形成症, 先天性甲状腺機能低下症, Down症候群, 頭蓋内圧亢進, 正常亜型, 家族性大頭症(閉鎖遅延の場合), くる病9)




小さな大泉門・早期閉鎖

・一般的には1歳から1歳半ころに閉鎖すると認識されており, 教科書には早くて生後9か月までに閉鎖することがあると記載がある14). 従ってこの時期よりも早くに閉鎖している場合に異常だと認識される場合がある. その一方で, 正常でも生後3か月には閉鎖する可能性があるともされており9), 実際, 正常でも3-5%の児は生後5, 6か月で閉鎖したことが示されている.2)
・早期閉鎖が疑われる場合には正常亜型の場合もあるが, 重要な原因である小頭症の可能性も考慮して注意深い頭囲のモニタリングが必要となる.
・大泉門が早い段階で小さいか早期閉鎖傾向にあっても, 正常であれば頭囲は正常な発育をたどると考えられる.

原因
・頻度の高い原因: 染色体異常, 頭蓋縫合早期癒合症, 先天感染症, 胎児アルコール症候群, 低酸素性虚血性脳症, 正常亜型9)


参考文献
10) ベッドサイドの小児神経・発達の診かた. 改訂3版, 南山堂, 2009, p.46
11) Variation in fontanelle size with gestational age. Early Hum Dev 1999; 54: 207-14
12) Anterior fontanelle size in the neonate. Arch Dis Child 1975; 50: 81-3
13) Evaluation of fontanel size variation and closure time in children followed up from birth to 24 months. J Neurosurg Pediatr 2018; 22(3): 323-9
14) NELSON Textbook of Pediatrics 21th edition

改訂:
2018/11/15: 参考文献13追加, 参考文献9から図を引用
2019/12/6: 参考文献14追加, 14やその他の内容を参考に追記

2018年1月19日金曜日

米国小児科学会におけるChoosing Wisely

"Choosing Wisely"は患者と医師に対して過剰医療についての情報を提供することで医師と患者との関係を密にし, 患者中心医療の推進を目的とするキャンペーンです(JAMA 2012; 307(17): 1801-2)


米国の各学会が指針を発表しており, 米国小児科学会(American Academy of Pediatrics: AAP)も現在以下の10項目発表しています.


1. 明らかなウイルス性呼吸器疾患(副鼻腔炎, 咽頭炎, 気管支炎, 細気管支炎)に対して抗菌薬は使用されるべきではない.

2. 4歳未満の小児における呼吸器疾患に対して鎮咳薬や感冒薬は処方されたり推奨されるべきではない.

3. 微小な頭部外傷の迅速な評価においてCTは必要ない: 画像検査が適応となるかどうかを決定するために臨床的観察/Pediatric Emergency Care Applied Research Network (PECARN)基準が用いられるべきである.

4. 単純型熱性けいれんの小児において神経画像検査(CT, MRI)は不要である.

5. 腹痛のルーティーンでの評価においてCTは不要である.

6. 早産児における気管支肺異形成の予防や治療において高用量デキサメタゾン( 0.5mg/kg/day)は処方しない

7. これまで食物アレルギーを考慮させる病歴のない食物アレルギーにスクリーニングのIgE検査を行なうべきではない.

8. 苦痛がなく痛みもなく成長に影響しない生理的胃食道逆流(GER)に対して酸分泌阻害薬やメトクロプラミドなどの消化管運動改善薬の使用を避ける. いわゆる“happy-spitter”に対して薬物は使用しない

9. 無症候性細菌尿のスクリーニングや治療のためにサーベイランスでの培養を用いるべきではない

10. 乳児の家庭での無呼吸モニターは乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防のためにルーティーンで用いられるべきではない.


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以下では10項目についての解説の要約を付けています

American Academy of Pediatrics
Ten Things Physicians and Patients Should Question



1. 明らかなウイルス性呼吸器疾患(副鼻腔炎, 咽頭炎, 気管支炎, 細気管支炎)に対して抗菌薬は使用されるべきではない.
 細菌感染症(A群溶連菌性咽頭炎や化膿性鼻副鼻腔炎など)を示唆する所見・検査結果がみられない限り, 咳や鼻水といったかぜ症状がみられる場合でも抗菌薬は処方すべきではない.
 呼吸器感染症では「念のため」・「細菌感染症の可能性が否定できない」といった理由で抗菌薬が投与されることが少なくない.
 基本的にはウイルス性疾患である咽頭炎や気管支炎, 細気管支炎では抗菌薬は不要であり, 鼻副鼻腔炎でも自然治癒が十分期待できる例は少なくなく, 抗菌薬が必須ではない.

 不要な抗菌薬は抗菌薬への耐性を招き, 医療費を上昇させ, 有害事象のリスクを上昇させる可能性がある.
 したがって, 極力不要な抗菌薬の使用は避けるべきである.





2. 4歳未満の小児における呼吸器疾患に対して鎮咳薬や感冒薬は処方されたり推奨されるべきではない.
・研究により若年小児においてこれらの薬剤の有益性は少なく, 重篤な副作用を起こす可能性があることが示されている.




3. 微小な頭部外傷の迅速な評価においてCTは必要ない: 画像検査が適応となるかどうかを決定するために臨床的観察/Pediatric Emergency Care Applied Research Network (PECARN)基準が用いられるべきである.
・微小な頭部外傷の小児におけるCT施行を決定する前の臨床的観察は効果的なアプローチである




4. 単純型熱性けいれんの小児において神経画像検査(CT, MRI)は不要である.
・CTは放射線曝露と関連しており, MRIは鎮静を必要としてコストが高い. また熱性けいれんの児の評価における頭部画像検査の使用は文献では支持していない.




5. 腹痛のルーティーンでの評価においてCTは不要である.
・過剰な放射線曝露による生涯での発癌のリスク上昇が懸念されるため, 過剰なCTは行わない.




6. 早産児における気管支肺異形成の予防や治療において高用量デキサメタゾン( 0.5mg/kg/day)は処方しない
・0.5mg/kg/dayより少量の投与と比較して, さらなる治療的有益性はないとみられており推奨されない




7. これまで食物アレルギーを考慮させる病歴のない食物アレルギーにスクリーニングのIgE検査を行なうべきではない.
・臨床的なアレルギーがなく特異的IgE検査陽性である状態はよくみられる.




8. 苦痛がなく痛みもなく成長に影響しない生理的胃食道逆流(GER)に対して酸分泌阻害薬やメトクロプラミドなどの消化管運動改善薬の使用を避ける. いわゆる“happy-spitter”に対して薬物は使用しない
・生理的GERに対して上記の薬剤は効果的ではないというエビデンスがある.




9. 無症候性細菌尿のスクリーニングや治療のためにサーベイランスでの培養を用いるべきではない
・無症候性細菌尿の治療は有害であり, その後の耐性菌感染症の危険因子である抗菌薬への曝露を増やす.




10. 乳児の家庭での無呼吸モニターは乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防のためにルーティーンで用いられるべきではない.
・家庭での無呼吸モニターがSIDSの発生率を減らすというエビデンスはない(Pediatrics 2011; 128(5): 1030-9)

2018年1月16日火曜日

特発性胸痛

疫学

・胸痛の原因の21-73.6%を占める
 ・小児の胸痛の原因の中でもっとも頻度が高かったとする報告が多い
・好発年齢: 10歳以上の小児
 ・わずかに男児が多い傾向が見られた報告はある.




臨床症候

胸痛
・痛みは鋭く短い(数秒から数分), また深呼吸で増悪する
・痛みの部位は典型的には胸骨中央から乳頭下周辺にかけて
・胸骨や肋軟骨の触診で痛みが誘発されることがある
・痛みは反復してみられることがある




診断

・病歴や検査などで他の原因を除外することで診断される
・ベルギーでの胸痛を主訴にしてERを受診した患者の報告では, 以下の項目のいずれも満たさない場合, 特発性を含む胸壁痛の可能性が非常に高かった:
 ・咳嗽, 外傷歴, ストレスがかかる出来事, 呼吸困難, 食事に関連した痛み, 発熱, 病的な心音, 動悸, 不安
・precordial catch症候群は特発性胸痛とは別の存在であるか, あるいは特発性胸痛であるかどうかに関して専門家の意見は様々である.




予後

・31人の患者を平均4.1年経過観察した報告では, 45%で症状は持続したが, 3年以上の経過で81%の患者で胸痛は消失していた.


参考文献
1) Pediatric chest pain: a prospective study. Pediatrics 1988; 82(39: 319-23
2) Chest pain in pediatric patients presenting to a cardiac clinic. Clin Pediatr (Phila). 1984; 23(6): 321-43
3) Chest pain in children. Follow-up of patients previously reported. Clin Pediatr (Phila). 1990; 29(7): 374-7
4) Adolescent chest pain: a prospective study. Pediatrics. 1983; 71(6): 881-7
5) Analysis of clinical characteristics and causes of chest pain in children and adolescents. Korean J Pediatr 2015; 58(11): 440-5
6) Chest pain in pediatric patients presenting to an emergency department or to a cardiac clinic. Clin Pediatr (Phila) 2004; 43: 231-8
7) Pediatric Decision-Making Strategies. 2nd edition. 2016
8) The natural history of idiopathic chest pain in children. A follow-up study. Chiln Pediatr (Phila) 1986; 25(12) 612-4
9) A Teen with Chest Pain. Pediatr Clin N Am 2014; 61: 17-28
10) Chest Pain in Children. Pediat Therapeut 2013; 3(2)

2017年9月19日火曜日

生後60日以下の発熱している児においてCBCのパラメーターは侵襲性細菌感染症を特定するには感度が低い

Accuracy of Complete Blood Cell Counts to Identify Febrile Infants 60 Days or Younger With Invasive Bacterial Infections
JAMA Pediatr 2017 Sep 11


侵襲性細菌感染症(IBI)に罹患した発熱している乳児を特定するための全血算(CBC)の個々のパラメーターの精度を評価した前向き研究


方法

・研究期間: 2008-2013年
・以下の児が対象となった:
 ・生後60日以下
 ・体温38.0℃以上の発熱がある
 ・それまで健康であった児
 ・正期産児
 ・血液培養が採取されている
・IBI: 菌血症and/or細菌性髄膜炎




結果

・登録された4313人の児のうち, 1340人(31%)が生後0-28日, 2412人(56%)が男児, 2471人(57%)が白人であった
・97人(2.2%)がIBIに罹患していた
・一般的なCBCのパラメーターの閾値では感度は低かった: カッコ内は特異度
 ・WBC数<5000/μL … 10%(91%)
 ・WBC数≧15000/μL … 27%(87%)
 ・好中球絶対数≧10000/μL … 18%(96%)
 ・血小板数<10万/μL … 7%
・最適な閾値(WBC数11600/μL, 好中球絶対数4100/μL, 血小板数36.2万/μL)では感度57%, 特異度70%であった





まとめ


一般的なCBCのパラメーター(白血球数など)ではいずれも感度が低いため, それらが基準値内であってもIBIは否定できない(というよりは可能性が低いともいえない)

2017年8月30日水曜日

小児における発熱の管理 - イタリア小児科学会 2016年改訂のガイドライン

2016 Update of the Italian Pediatric Society Guidelines for Management of Fever in
Children
J Pediatr 2017; 180: 177-83



要約


・解熱薬は児の不快感をコントロールする目的で投与されるべきである
・解熱薬は経口で投与されるべきである; 直腸投与は嘔吐がある状況を除いて推奨されない
・リスクと有益性を考慮してパラセタモールとイブプロフェンの組み合わせの使用は推奨
されない
・予防接種が行われた小児における発熱と局所反応の発生率を低下させるための前もって
の解熱薬の投与は推奨されない
・小児における熱性けいれんの予防目的での使用は推奨されない
・既知のパラセタモールや非ステロイド抗炎症薬誘発性喘息の症例を除いて, イブプロフェ
ンとパラセタモールは喘息のある発熱している小児で禁忌ではない

(ちなみにアセトアミノフェンとパラセタモールは同じものです)


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日本では経験的にアセトアミノフェン坐薬が解熱薬として用いられる頻度が高いと思います。
イタリア小児科学会での小児における発熱の管理のガイドラインは2009年に作成されて以来, 経直腸投与よりも経口投与を推奨しています(Clin Ther. 2009 Aug;31(8):1826-43). 経直腸投与は吸収がより緩徐で不安定であること(Can J Anaesth. 1995 Nov;42(11):982-6)から経口投与が好まれていると思います.
しかし, 2008年のメタアナリシスでは経口投与と経直腸投与の効果は同等であったとされています(Arch Pediatr Adolesc Med. 2008 Nov;162(11):1042-6)

従って, 現時点ではいずれの方法でも、児の不快感をコントロールする目的においては大きな差はないかと考えています.
ただ, その他の研究結果などを勉強してさらに検討する必要はあります.

2017年8月23日水曜日

小児における致命的な胸痛に対するスクリーニングの効果

Effectiveness of Screening for Life-Threatening Chest Pain in Children.
Pediatrics 2011; 128(5): e1062-8


非心原性胸痛と推定された患者の心原性突然死の発生率を調べた後方視的研究
・Children’s Hospital Bostonの外来を胸痛が主訴で受診した6歳以降の小児が対象となった


結果
・胸痛患者3700人のデータを再検討した(年齢の中間値: 13.4歳[7-22.3歳])
・経過観察期間の中間値は4.4年(0.5-10.4年)
・労作に伴う胸痛は33%で見られた
・併存していた症状: 動悸(22%), 呼吸困難(16%), めまい(11%), 失神(1.3%)
 ・失神が併存していた患者19人のうち15人(0.4%)は運動性失神であった
・心臓外来を受診する前に18%が救急外来を受診していた
・心原性の症例は37例(1%)認められた
 ・心原性の主な原因: 上室性頻拍(n=14), 心膜炎(n=10), 心筋炎(n=4), 右冠動脈異常(n=3)
・心原性以外の3663症例の原因:
 ・不明(n=1928) (52%)
 ・筋骨格系(n=1345) (36%)
 ・肺(n=242) (6.5%)
 ・消化管(n=108) (2.9%)
 ・不安関連(n=34) (0.9%)
 ・薬物関連(n=4) (0.1%)
・胸痛で救急外来を受診した患者は670人(18%)認められ, 263人(7%)は胸痛に関連して心臓専門医に経過観察目的で受診していた
・2例が自殺, 1例が特発性過眠症後腹膜出血で死亡していたが, 心臓関連で死亡した症例は認められなかった

2017年8月10日木曜日

小児における後頭部の頭痛と頭蓋内病変

Occipital headaches and neuroimaging in children.
Neurology 2017; 89(5): 469-74


後頭部の頭痛を認める18歳未満の小児患者を評価した後ろ向き研究

・頭痛で大学の小児神経外来へ紹介された18歳未満の小児患者が対象
・神経学的診察で異常が指摘された患者は除外




結果

・対象は308人で, 年齢の中間値は12歳(32か月から18歳), 57%が女性
・後頭部のみの頭痛は7%, 後頭部とその他の頭痛は14%でみられた
・120人(34%)が片頭痛の診断基準を満たし, さらに120人で片頭痛が疑われた

神経画像検査
・205人で神経画像検査が施行され, 179人(87%)では異常所見はみられなかった
・主な異常所見: 副鼻腔炎(23人), 良性嚢胞(13人), Chiari奇形I型(6人), 異所性小脳(3人), 脳腫瘍(2人)
・後頭部の頭痛のない患者と比較して後頭部の頭痛のある患者では有意に神経画像検査を施行される割合が高かった(後頭部のみ95%, 後頭部+その他88%, 後頭部なし63%)
・後頭部の頭痛は臨床的に意義のある頭蓋内病変の放射線学的所見と有意に関連しなかった




まとめ

・頭痛が後頭部にみられた場合には画像検査が行われる頻度が高かったが, 小児の後頭部の頭痛と頭蓋内病変との間で関連性はなさそうである.
・したがって頭痛の部位が後頭部というだけで画像検査の必要性が高まるわけではない.

2017年3月9日木曜日

選択的な抗菌薬投与や腰椎穿刺を行わない生後90日未満の発熱児の管理


日本では24時間近く病院に滞在するためには入院する必要があることが一般的と思われるので, 簡単に外来管理として流用するのは難しいと思われる



Outpatient management of selected young febrile infants without antibiotics.
Arch Dis Child. 2017; 102(3): 244-9

方法:
重症細菌感染症(SBI)の低リスクの基準を満たして, 抗菌薬投与や髄液検査を行わず, 外来患者として管理された小児の転帰を分析した前方視的研究

低リスクの基準:
・元気にみえる
・日齢21以上
・白血球尿がない
・好中球数≦10000
・血清CRP値≦2mg/dL
・プロカルシトニン<0.5ng/mL
・救急外来(24時間未満)滞在中の臨床的増悪がない

結果:
・676人がSBIに関して低リスクと分類された
・24時間未満の救急外来滞在後, 586 (86.6%)が外来患者として抗菌薬投与を行わず管理された
・2人の患者がSBIと診断された: 菌血症と細菌性腸炎がそれぞれ1人ずつ
・臨床的増悪で救急外来を再診した患者はいなかった
・51人(8.7%)は主に持続する発熱や易刺激性で救急外来を再診した
 ・そのうちで確定的なSBIや細菌性髄膜炎と診断されたものはいなかった