"Choosing Wisely"は患者と医師に対して過剰医療についての情報を提供することで医師と患者との関係を密にし, 患者中心医療の推進を目的とするキャンペーンです(JAMA 2012; 307(17): 1801-2)
米国の各学会が指針を発表しており, 米国小児科学会(American Academy of Pediatrics: AAP)も現在以下の10項目発表しています.
1. 明らかなウイルス性呼吸器疾患(副鼻腔炎, 咽頭炎, 気管支炎, 細気管支炎)に対して抗菌薬は使用されるべきではない.
2. 4歳未満の小児における呼吸器疾患に対して鎮咳薬や感冒薬は処方されたり推奨されるべきではない.
2. 4歳未満の小児における呼吸器疾患に対して鎮咳薬や感冒薬は処方されたり推奨されるべきではない.
3. 微小な頭部外傷の迅速な評価においてCTは必要ない: 画像検査が適応となるかどうかを決定するために臨床的観察/Pediatric Emergency Care Applied Research Network (PECARN)基準が用いられるべきである.
4. 単純型熱性けいれんの小児において神経画像検査(CT, MRI)は不要である.
5. 腹痛のルーティーンでの評価においてCTは不要である.
6. 早産児における気管支肺異形成の予防や治療において高用量デキサメタゾン( 0.5mg/kg/day)は処方しない
7. これまで食物アレルギーを考慮させる病歴のない食物アレルギーにスクリーニングのIgE検査を行なうべきではない.
8. 苦痛がなく痛みもなく成長に影響しない生理的胃食道逆流(GER)に対して酸分泌阻害薬やメトクロプラミドなどの消化管運動改善薬の使用を避ける. いわゆる“happy-spitter”に対して薬物は使用しない
9. 無症候性細菌尿のスクリーニングや治療のためにサーベイランスでの培養を用いるべきではない
10. 乳児の家庭での無呼吸モニターは乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防のためにルーティーンで用いられるべきではない.
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
以下では10項目についての解説の要約を付けています
American Academy of Pediatrics
American Academy of Pediatrics
Ten Things
Physicians and Patients Should Question
1. 明らかなウイルス性呼吸器疾患(副鼻腔炎, 咽頭炎, 気管支炎, 細気管支炎)に対して抗菌薬は使用されるべきではない.
細菌感染症(A群溶連菌性咽頭炎や化膿性鼻副鼻腔炎など)を示唆する所見・検査結果がみられない限り, 咳や鼻水といったかぜ症状がみられる場合でも抗菌薬は処方すべきではない.
呼吸器感染症では「念のため」・「細菌感染症の可能性が否定できない」といった理由で抗菌薬が投与されることが少なくない.
基本的にはウイルス性疾患である咽頭炎や気管支炎, 細気管支炎では抗菌薬は不要であり, 鼻副鼻腔炎でも自然治癒が十分期待できる例は少なくなく, 抗菌薬が必須ではない.
不要な抗菌薬は抗菌薬への耐性を招き, 医療費を上昇させ, 有害事象のリスクを上昇させる可能性がある.
呼吸器感染症では「念のため」・「細菌感染症の可能性が否定できない」といった理由で抗菌薬が投与されることが少なくない.
基本的にはウイルス性疾患である咽頭炎や気管支炎, 細気管支炎では抗菌薬は不要であり, 鼻副鼻腔炎でも自然治癒が十分期待できる例は少なくなく, 抗菌薬が必須ではない.
不要な抗菌薬は抗菌薬への耐性を招き, 医療費を上昇させ, 有害事象のリスクを上昇させる可能性がある.
したがって, 極力不要な抗菌薬の使用は避けるべきである.
2. 4歳未満の小児における呼吸器疾患に対して鎮咳薬や感冒薬は処方されたり推奨されるべきではない.
・研究により若年小児においてこれらの薬剤の有益性は少なく, 重篤な副作用を起こす可能性があることが示されている.
3. 微小な頭部外傷の迅速な評価においてCTは必要ない:
画像検査が適応となるかどうかを決定するために臨床的観察/Pediatric
Emergency Care Applied Research Network (PECARN)基準が用いられるべきである.
・微小な頭部外傷の小児におけるCT施行を決定する前の臨床的観察は効果的なアプローチである
4. 単純型熱性けいれんの小児において神経画像検査(CT,
MRI)は不要である.
・CTは放射線曝露と関連しており, MRIは鎮静を必要としてコストが高い. また熱性けいれんの児の評価における頭部画像検査の使用は文献では支持していない.
5. 腹痛のルーティーンでの評価においてCTは不要である.
・過剰な放射線曝露による生涯での発癌のリスク上昇が懸念されるため, 過剰なCTは行わない.
6. 早産児における気管支肺異形成の予防や治療において高用量デキサメタゾン(
0.5mg/kg/day)は処方しない
・0.5mg/kg/dayより少量の投与と比較して, さらなる治療的有益性はないとみられており推奨されない
7. これまで食物アレルギーを考慮させる病歴のない食物アレルギーにスクリーニングのIgE検査を行なうべきではない.
・臨床的なアレルギーがなく特異的IgE検査陽性である状態はよくみられる.
8. 苦痛がなく痛みもなく成長に影響しない生理的胃食道逆流(GER)に対して酸分泌阻害薬やメトクロプラミドなどの消化管運動改善薬の使用を避ける.
いわゆる“happy-spitter”に対して薬物は使用しない
・生理的GERに対して上記の薬剤は効果的ではないというエビデンスがある.
9. 無症候性細菌尿のスクリーニングや治療のためにサーベイランスでの培養を用いるべきではない
・無症候性細菌尿の治療は有害であり, その後の耐性菌感染症の危険因子である抗菌薬への曝露を増やす.
10. 乳児の家庭での無呼吸モニターは乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防のためにルーティーンで用いられるべきではない.
・家庭での無呼吸モニターがSIDSの発生率を減らすというエビデンスはない(Pediatrics 2011; 128(5): 1030-9)
0 件のコメント:
コメントを投稿