2019年9月13日金曜日

2013-2016年の日本の小児におけるインフルエンザ発症と入院に対するワクチンの予防効果の分析

Three-season effectiveness of inactivated influenza vaccine in preventing influenza illness and hospitalization in children in Japan, 2013–2016. Vaccine 2018; 36(8): 1063-71


小児におけるインフルエンザ発症とインフルエンザによる入院に対するインフルエンザワクチンの効果を診断陰性例コントロールデザインを用いて検討した日本での研究


方法

・本研究には小児科外来と小児科病棟の両方を有する22の病院が参加した
・2015年11月1日から2016年3月31日の間で以下の生後6か月から15歳までの小児全員が対象となった:
 ・38℃以上の発熱がある
 ・咳嗽か鼻汁, あるいは両方がある
 ・小児科外来で迅速検査を受けた
・発症から14日以内にインフルエンザワクチンを接種した児は除外した

・インフルエンザの診断は鼻咽頭スワブから得られた検体を用いて行われた
 ・いくつかの異なる種類のキットが用いられたが, どのキットも感度や特異度は同程度である
・研究に登録される前にノイラミニダーゼ阻害薬(NAI)で治療されていた患者はいなかった

・迅速検査で陽性となった患者を症例患者, 陰性となった患者を対照患者とした
・インフルワクチンの接種情報がはっきりしない児は除外した
・診断陰性例コントロール(test-negative case control : TNCC)デザインを用いてインフルエンザワクチンの効果を評価した
・インフルエンザによる入院に対するインフルエンザワクチンの効果は症例対照研究とTNCCデザインの両方を用いて行なった
 ・症例対照研究に関しては, 迅速検査の結果に関わらず, インフルエンザ様疾患と診断され入院しなかった児を対照患者とした

・効果および入院に対する予防効果を2013-2016年の3シーズンでも検討した
  ・2013/2014年と2014/2015年シーズンで用いられたインフルエンザワクチンは3価ワクチンであった




結果

・2015/2016年シーズンで4496人の小児が研究に登録されたが, そのうち87人は除外された

2015/2016年シーズンでのワクチンの効果
・それぞれの条件におけるワクチンの効果:
・インフルエンザ全体: 49%
・インフルエンザA: 57%
・インフルエンザB: 34%
・年齢別では6-11か月の小児では効果はとても低かったが, 1-12歳では効果は中等度以上であった


3シーズンでのワクチンの効果
・3シーズンでのそれぞれの条件におけるワクチンの効果:
・インフルエンザ全体: 45%
・インフルエンザA: 51%
・インフルエンザB: 32%
・3シーズンでの分析においても6-11か月の児におけるワクチンの効果は低かった


2015/2016年シーズンでの入院に対する効果
・症例対照研究:
 ・9741人のインフルエンザ様疾患小児が対照群となった(そのうちワクチンを接種していたのは47.1%)
 ・重症で入院が必要なために入院となった児は775人であった(そのうちワクチンを接種していたのは30.8%)
 ・それぞれの条件における入院に対するワクチンの効果:
・インフルエンザ全体: 46%
・インフルエンザA: 52%
・インフルエンザB: 28%
・TNCCデザイン:
 ・775人の迅速検査陽性患者が入院した(ワクチン接種率は30.8%)
 ・668人の迅速検査陰性患者が入院しており, これらの児を対照群とした(ワクチン接種率は47.8%)
 ・それぞれの条件における入院に対するワクチンの効果:
・インフルエンザ全体: 48%
・インフルエンザA: 54%
・インフルエンザB: 34%


3シーズンでの入院に対する効果
・症例対照研究:
 ・2997人の小児が対照群となった(そのうちワクチンを接種していたのは45.7%)
 ・重症で入院が必要なために入院となった児は341人であった(そのうちワクチンを接種していたのは31.1%)
 ・それぞれの条件における入院に対するワクチンの効果:
・インフルエンザ全体: 41%
・インフルエンザA: 55%
・インフルエンザB: 23%
・TNCCデザイン:
 ・341人の迅速検査陽性患者が入院した(ワクチン接種率は31.1%)
 ・403人の迅速検査陰性患者が入院しており, これらの児を対照群とした(ワクチン接種率は44.9%)
 ・それぞれの条件における入院に対するワクチンの効果:
・インフルエンザ全体: 46%
・インフルエンザA: 59%
・インフルエンザB: 26%




まとめ

・小児において, インフルエンザワクチンは発病予防だけでなく入院を防ぐ効果もあることが示唆された




ちょっと思ったこと

1歳未満におけるインフルエンザワクチンをどう考えるか
 インフルエンザワクチンは生後6か月から接種が推奨されている. 米国小児科学会から発表されている2019/2020年シーズンでのインフルエンザに対する予防とコントロールの指針でも生後6か月以上の児に対するワクチン接種は推奨されている1).
 その一方で, 本研究で示されているように年齢別で効果が異なることも多くの研究から示されている. そのため年齢別の効果について検討されているものの, 生後6-23か月がひとくくりとなって分析されている研究も多い. 従って, 6か月から1歳未満という限られた範囲の年齢層での効果については十分に評価ができていない可能性はある.

 今回の研究結果では1歳未満におけるインフルエンザワクチンの効果は極めて限定的であることが示唆されている. しかしこの結果だけで1歳未満の児でワクチンの接種は不要だとは判断できない. この研究では
・1歳未満の症例数が少ないこと
・発症や入院に対する予防効果の評価に留まっている
・インフルエンザの診断に用いられた検査は迅速検査(標準はRT-PCR)
であるなど, 気になる点もある.
 従って, 総合的には現状の推奨通り6か月以上の小児でインフルエンザワクチンの接種を推奨する, という考え方のよいと思われる.
 
参考文献
1) Recommendations for Prevention and Control of Influenza in Children, 2019–2020. Pediatrics 2019 Sep

2019年9月9日月曜日

クループ

はじめに

・クループは犬吠様咳嗽が特徴的な小児でよくみられる呼吸器疾患であり, 通常吸気性喘鳴や嗄声を伴う
・みられる頻度は低くなく, また鑑別診断として喉頭蓋炎などの重要な疾患も含まれており, クループについて知っておくことはとても有益であると考えられる.




分類

・クループは原因や障害部位によって大きく以下の4つに分類される:12)
 ・喉頭気管炎
 ・喉頭気管気管支炎および喉頭気管気管支肺炎
 ・痙性クループ
 ・喉頭ジフテリア
・上記の分類のうち, クループの多くは喉頭気管炎か痙性クループである
・用語として似たものが多く, クループは総称して急性喉頭炎と呼ばれることもあるが厳密には異なるものである.


痙性クループ
・夜間に突然発症し, 声門下領域における炎症を伴わない浮腫が生じることで起こるクループで, 繰り返し発症することがある
・ウイルス感染が引き金となるが, ベースとしてアレルギー素因の存在との関連性も指摘されている.
・クループの家族歴は繰り返すクループの危険因子である可能性が指摘されている6)




疫学

年齢
・クループは通常6か月から3歳までが好発年齢として知られている. 米国での研究での入院症例を検討した研究でも, 5歳未満の小児が全体の90.9%を占めていた3)

性別
・やや男児の方が罹患しやすく, 一般的には男児:女児 = 1.4:1とされている

季節
・クループを引き起こす原因として頻度の高いパラインフルエンザウイルス1型(PIV1)が秋に流行しやすいため, 秋にクループが流行しやすいとされている5).
・日本でのデータはあまりないが, 三重県で行われた研究では7-10月にかけてPIV1の検出数が増えていた4).




病因

概要
・頻度の高い喉頭気管炎, 痙性クループはいずれもウイルスによって引き起こされることがほとんどである.
・クループを引き起こす主なウイルスとしては以下のものが挙げられる:3)13)
 ・パラインフルエンザ1型 (最も頻度が高い)
 ・パラインフルエンザ2型, 3型
 ・RSウイルス
 ・ヒトボカウイルス
 ・ライノウイルス
 ・エンテロウイルス
 ・インフルエンザA
 ・コロナウイルス
 ・麻疹ウイルス


パラインフルエンザウイルス(PIV)

・PIV1がクループの最も多い原因で, 前述の通り, 一般的には秋から冬に流行する
・PIV2は時々クループのアウトブレイクの原因となるが, 通常はPIV1より軽症である


麻疹
・麻疹が未だに流行している地域では麻疹はクループの重要な原因である


インフルエンザウイルス
・インフルエンザウイルスによるクループはPIVによるクループと比較してより重症となる傾向があることが示されている
・PIVによるクループと比較してインフルエンザによるクループで入院した時は入院期間が長く, 喉頭症状の再発による再入院の危険性が高くなる傾向があるとする報告がある9)
 ・入院中にエピネフリン吸入が使用される頻度も高かった(48% vs 11%)
・ある報告ではクループ全体に占めるインフルエンザAの割合は9.0%を占めていた13). 従ってインフルエンザによるクループも珍しくはないと思われる.




臨床症候

概要
・犬吠様咳嗽, 吸気性喘鳴, 嗄声の3つの症状がみられることが特徴的.
・夜間に症状が増悪しやすい特徴があり, 咳などによって睡眠が障害されることもある
・症状の持続期間は平均2-3日程度とされる18)


犬吠様咳嗽
・"犬が吠えるような咳"と表現されるが, 実際にはオットセイなどに似た, など様々な訴えで表現されることがある
・特徴的な症状であり診断にとても有用であると思われる. 一方, 夜間に症状がみられ日中に受診した場合にはその咳嗽の状態の把握が難しく, 診断が難しいケースもある.


時間帯による症状の変化
・クループでは日中よりも夜間に症状が増悪しやすい傾向があることが知られている8)
・韓国での研究では, 救急外来への受診は0時から3時の間がピークであったことが示されている7)



検査

臨床検査
・血液検査は診断において必要ない. 後述する鑑別診断が疑われる場合には行われることがあるかもしれない.

画像検査
・正面喉頭X線では声門下の狭窄を反映した画像所見がみられることがあり, steeple signやpencil signと呼ばれる.
・側面喉頭X線はその他の診断(例: 喉頭蓋炎, 細菌性気管炎)が疑われる場合に行われることがある.




診断

・基本的に臨床経過や身体所見などから診断し, 臨床検査や画像検査は不要である.
・下記に挙げられるようなその他の診断が疑われる場合には上記検査を実施することがある.




鑑別診断

主な鑑別診断8)
・喉頭蓋炎
・細菌性気管炎
・異物誤嚥
・咽後膿瘍
・扁桃周囲膿瘍
・血管性浮腫
・アレルギー反応
・心因性咳嗽


喉頭蓋炎
・喉頭蓋炎はHibワクチンの導入後から症例は減少しているものの, 吸気性喘鳴がみられる病気の鑑別において重要な疾患であることに変わりはない.
・喉頭蓋炎とクループを臨床症候を比較した研究では, 流涎が喉頭蓋炎の診断の予測において信頼できる徴候であった. その他の信頼できる徴候としては以下のものが挙げられている:16)
 ・座りたがる
 ・飲み込むのを嫌がる / 嚥下障害
・上記研究において, 咳嗽があることはクループに予測的であったことも示されているが, 咳嗽の存在で喉頭蓋炎は否定しないように注意する.
・喉頭蓋炎も夜間に受診する割合が高い可能性が示されている7)



犬吠様咳嗽と鑑別診断
・犬吠様咳嗽はクループに特徴的であるが, 気管軟化症や心因性咳嗽でもみられることがあるため, 特に非典型例では経過などに注意を要する.


重症度

・クループの重症度を評価する方法としてWestley scoreが知られている


Westley Score

所見/スコア
0
1
2
3
4
5
意識状態
睡眠を含め正常




意識障害
チアノーゼ
なし



興奮時
安静時
喘鳴
なし
興奮時
安静時



空気の入り
正常
低下
著明に低下



陥没呼吸
正常
軽度
中等度
重度


2点以下: 軽症 / 3-7点: 中等症 / 8点以上: 重症

・小児救急外来でのクループ患者で前向きに評価した研究では, 以下のような結果が示されている:14)
 ・重症クループ症例であっても, チアノーゼと意識障害は臨床的な意義がなかった
 ・陥没呼吸とair entry(空気の入り)が臨床的転帰を予測するために最も重要な因子であった
 ・最初のWestley scoreは病院の滞在期間と強く相関していた




治療

・クループに対する治療としては代表的なものとしては以下のものが知られている:
 ・全身ステロイド投与
 ・アドレナリン吸入


全身ステロイド投与
・通常, デキサメタゾン 0.15-0.6mg/kg 1回投与で治療が行われる
 ・最大量は16mgとされることが多い
・クループに対するデキサメタゾンの治療効果は様々な研究で示されている17)
・デキサメタゾンの投与量は0.15mg/kgから0.6mg/kgまで幅がある. 実際には下記に示すような研究から, 多くの症例では0.15mg/kgで十分効果は期待できると考えられる.
 ・デキサメタゾン(0.6mg/kg), 低用量デキサメタゾン(0.15mg/kg), プレドニゾロン(1mg/kg)投与での治療効果を比較したオーストラリアでのRCTでは, 1時間での平均Westley scoreや治療後7日以内での再受診率に明らかな差はみられなかった1)
 ・Westley scoreが2点以上のクループを対象としたオーストラリアでのRCTでも, デキサメタゾン(0.6mg/kg), 低用量デキサメタゾン(0.15mg/kg), プレドニゾロン(1mg/kg)投与で明らかな差はみられなかった2)

・重症例では投与量を増やすという考え方はあるが, 重症例ほど投与量が多い方がいいかどうかについての明確なエビデンスはない. ただし投与量が多くなることで明らかな有害事象が増えるといった報告もないため, 重症例では0.6mg/kgの投与は考慮してもよいかもしれない


アドレナリン吸入
・アドレナリン吸入は症状を軽減するなどの有益性があることが示されている15).
・アドレナリン吸入治療を用いる場合には以下の点に注意する必要がある:
 ・海外で効果を示した投与量と比べて, 日本で一般的に用いられている量は少ない
 ・効果は10分以内にはみられはじめ, 1-2時間程度続く
 ・効果がみられなくなったあと, 症状は元に戻るかそれに近い状態となることがある
 ・吸入がうまくいっていないと, 期待ほどの効果が得られないかもしれない

・上記よりアドレナリン吸入による治療を単独で行う場合, 効果が切れたあとまで観察することを前提とした治療として捉える


その他
・鎮咳薬や去痰薬といった薬剤の有効性は示されていないため, 通常これらの処方は不要である.



参考文献
1) Prednisolone Versus Dexamethasone for Croup: a Randomized Controlled Trial. Pediatrics 2019; 144(3): e20183772
2) Comparison between single-dose oral prednisolone and oral dexamethasone in the treatment of croup: a randomized, double-blinded clinical trial. Emerg Med Australas. 2007; 19(1): 51-8
3) Pediatric hospitalizations for croup (laryngotracheobronchitis): biennial increases associated with human parainfluenza virus 1 epidemics. J Infect Dis. 1997; 176(6): 1423-7
4) Epidemiological investigation and seroprevalence of human parainfluenza virus in Mie Prefecture in Japan during 2009-2013. Jpn J Infect Dis. 2014; 67(6): 506-8
5) Human parainfluenza virus-associated hospitalizations among children less than five years of age in the United States. Pediatr Infect Dis J. 2001; 20(7): 646-53
6) Risk factors for croup in children with recurrent respiratory infections: a case-control study. Paediatr Perinat Epidemiol. 2009; 23(2): 153-9
7) Clinical characteristics of children and adolescents with croup and epiglottitis who visited 146 Emergency Departments in Korea. Korean J Pediatr. 2015; 58(10): 380-5
8) Croup. Lancet. 2008; 371(9609): 329-39
9) Clinical courses of croup caused by influenza and Parainfluenza viruses. Pediatr Infect Dis J. 2002; 21(1): 76-8
10) Westley score and clinical factors in predicting the outcome of croup in the pediatric emergency department. Pediatr Pulmonol 2017; 52(10): 1329-34
11) Respiratory viruses in laryngeal croup of young children. J Pediatr 2008; 152(5): 661-5
12) Clinical practice. Croup. N Engl J Med. 2008; 358(4): 384-91
13) Respiratory viruses in laryngeal croup of young children. J Pediatr. 2008 ;152(5):661-5
14) Westley score and clinical factors in predicting the outcome of croup in the pediatric emergency department. Pediatr Pulmonol 2017; 52(10): 1329-34
15) Nebulized epinephrine for croup in children. Cochrane Database Syst Rev. 2013; (10): CD006619
16) Symptoms and signs differentiating croup and epiglottitis. J Paediatr Child Health. 2011; 47(3): 77-82
17) Glucocorticoids for croup in children. Cochrane Database Syst Rev. 2018; 8: CD001955
18) Duration of symptoms of respiratory tract infections in children: systematic review. BMJ 2013; 347: f7027

2019年9月8日日曜日

小児のO脚

はじめに

・小児の特に乳幼児期ではO脚がみられることがあり相談を受けることがある
・O脚は正常でもみられ生理的O脚と呼ばれており, みられる頻度は高い.
・時に正常ではないO脚もするため注意は必要である.




生理的O脚

・脚の状態は年齢によって変化する. 個人差はあるものの, 脚の変化についておおよそ決まったパターンが存在する
・典型的なパターン:
 ・生まれた時: O脚
 ・立って歩き始めた頃:  O脚が目立つ
 ・2歳頃: O脚がみられなくなりまっすぐとなる
 ・2歳すぎから: X脚
 ・4歳過ぎ: X脚がみられなくなる
 ・6-7歳頃: 正常な状態となる
・従って出生時から2歳ごろまでは正常でもO脚となり, これを生理的O脚(Physiologic varus)と呼ぶ
・生理的O脚は通常X線撮影などの検査は不要で, 特に治療も要しない

・歩行開始時期がより早い場合, 生理的O脚の程度がより強くなるかもしれない1)




鑑別診断

・生理的O脚であれば問題ないものの, その他でもO脚がみられる病気が存在する. そのためそれらとの鑑別は重要となる
・主な鑑別疾患:
 ・Blount病
 ・くる病
・骨異形成症
 ・外傷, 感染症, 腫瘍
 ・先天性脛骨偽関節

・以下のような所見がみられる場合
には生理的なO脚以外の原因を考慮する:
 ・重度の湾曲
 ・進行する湾曲
 ・持続する湾曲(3歳以降)
 ・片側性もしくは非対称な湾曲
 ・歩行時に外側への推進 (lateral thrust with ambulation)
 ・低身長
 ・代謝疾患, 下肢骨折, 感染症や腫瘍の既往


Blount病
・Blount病はO脚がみられることが特徴的な病気である.
・脛骨正常板の非対称な成長(異常骨化が原因)によって引き起こされる. 
・Blount病の危険因子としては, より早期の年齢での歩行, アフリカ系アメリカ人, 過体重, Blount病の家族歴があることが挙げられる1)3)
・多くの場合, 両側性に障害される
生理的O脚は通常2歳までには程度が軽くなるかみられなくなるため, 2歳以降になってもO脚が進行する症例では考慮する


くる病
ビタミンD欠乏や代謝異常などによって引き起こされる病気で, 病的なO脚もみられる
・くる病の場合に左右対称性に大腿骨と脛骨の湾曲がみられることがあり, O脚のほかX脚となることもある


先天性脛骨偽関節 (Congenital pseudarthrosis of tibia)
・O脚の原因としてはとても稀
・神経線維腫症I型(neurofibromatosis type 1 : NF-1)と関連性が強いことが知られており, NF-1患者の約10%に合併する
・先天性脛骨偽関節患者の55-85%程度をNF-1患者が占めるとされている2).


参考文献

2019年9月2日月曜日

小児におけるつま先歩きと出生時の特徴との関連性

A Comparison of the Birth Characteristics of Idiopathic Toe Walking and Toe Walking Gait Due to Medical Reasons. J Pediatr 2016; 171: 290-3

はじめに

・小児において, 一時的につま先歩きがみられることは珍しくなく, 数%でみられると考えられている.
・言語障害や自閉症スペクトラム障害がある児などでみられやすいことが知られている一方, 特に神経精神学的に明らかな問題のない児において一時的につま先歩きがみられることがあり, 特発性つま先歩きと呼ばれている.
・特発性つま先歩きは遺伝的要因など様々な原因が考慮されているが, 十分には明らかなとはなっていない.
・つま先歩きに関しては様々な研究が行われているが, 出生時に関連した特徴との関連性は知られていない.






小児のつま先歩きと出生時の特徴の関連性に分析した研究

方法

・オーストラリアでの後ろ向き研究の診療記録レビュー
・2010年1月から2014年12月までの間で外来のつま先歩きクリニックを受診した小児のすべての診療記録は再検討した
 ・この外来クリニックは2010年に設立され, つま先歩きの児の多方面での評価と診断サービスを目的としている
・このクリニックでは児の出生時や医学的情報や発達の情報を確認するために両親へのアンケートを用いている
・一般的なオーストラリアでの周産期のデータは一般的な集団のデータを用いた




結果

・161人の診療記録を再検討し, 123人が対象となった
 ・除外となった38人は出生時のデータが不十分, もしくは診断が確定していなかった

・つま先歩きの児の内訳:
 ・特発性つま先歩き(Idiopathic toe-walking : ITW): 95人 (そのうち男児60人, 63%), 平均5.8歳
 ・既知の医学的理由があるつま先歩き(TWmr): 28人 (そのうち男児19人, 58%), 平均6.1歳
・既知の医学的理由があるつま先歩きにおける, つま先歩きに関連した診断:
 ・脳性麻痺 (3人)
 ・自閉症スペクトラム障害 (20人)
 ・その他の状態 (5人)


つま先歩きと周産期の状態との関連性
・ITWとTWmrはともに一般集団と比べて早産児であった割合が高かった(18% vs 17.9% vs 8.3%)
・ITWはTWmrと比べて介助を要した経膣分娩である割合が低かった (37.2% vs 48.0%)
・ITWは一般集団と比べて以下の割合が高かった:
 ・出生後の特別治療保育室(special care nursery : SCN)やNICUへの入院
 ・低出生体重児




まとめ

ITWの児は一般集団と比べて, 周産期において低出生体重児や早産児であった割合が高く, 出生後に特別な治療のために入院していた割合も高かった

2019年8月29日木曜日

陰唇癒合の程度が強い方が尿路感染症により罹患しやすいかもしれない

Labial adhesion and urinary tract problems: The importance of genital examination. J Pediatr Urol. 2016; 12(2): 111.e1-5



陰唇癒合(LA)のある女児での尿路感染症について分析したトルコでの研究

方法

・Kocaeli Derince Teaching and Reseach HospitalのPediatric Nephrology departmentに尿路の訴えやその他も問題で入院した女児で, LAと診断された女児
・期間は2010年10月から2012年10月
・診察した医師は以下のようにLAを分類した:
 ・厚さ: 薄い, 厚い(中等度, 密)
 ・程度: 完全, 部分
  ・開口部分が小さくピンポイントである重症なものを完全と定義した




結果

・46人の女児が対象となった
・初診時の平均年齢は51.9±37.6か月で, 平均経過観察期間は24.4±5.5か月
・46人のうち
 ・厚さは34人が薄く, 11人が中等度で, 1人が密であった
 ・範囲は21人が部分的で, 25人が完全であった

・27人(58.7%)に尿路感染症の既往があった
・尿路感染症の既往がある27人では
 ・厚さは15人が薄く, 12人が厚かった
 ・範囲は6人が部分的で, 21人が完全であった

・完全癒合の群の25人のうち21人(84%)で尿路感染症の既往があった一方, 部分的癒合の群の21人のうちで尿路感染症の既往があったのは6人(28.6%)であった(P < 0.05)
・厚い癒合の群の12人全員で尿路感染症の既往があった一方, 薄い癒合の群の34人のうち15人(44.1%)で尿路感染症の既往があった(P < 0.05)
・厚さは厚い方が, 範囲は完全な方が尿路感染症を起こした数は多かった




まとめ

・陰唇癒合の厚さや範囲という点で症状が強い方が尿路感染症に罹患しやすく, また罹患する回数も多いかもしれない.





陰唇癒合(Labial adhesion : LA)  - 個人的なまとめ

・陰唇癒合(labial adhesion : LA)は正中線上での小陰唇の部分的もしくは完全な癒合で, 小児期, 特に乳幼児期に起こる.
・陰唇癒合は海外での主だった報告では発症率が1%前後とされており, よくみられる状態であるとされている.
・日本では報告は少なく比較的稀であると考えられている一方, 松川らの報告では3か月健診を受けた女児の0.86%で発見されており, 頻度は想定されているよりも高い可能性があることも示唆されている
・陰唇癒合の発症年齢のピークは0-1歳頃


病因
・生まれた後に発症するとされている.
・低年齢での低エストロゲン状態が発症に関連していると考えられており, これに刺激などによる炎症によって癒合が起こると想定されている


臨床症候
・排尿障害などが症状としてみられることはあるが, 日本でまとまって数で検討された研究では多くは無症状であった.
 ・特に低年齢では無症状の割合が高い可能性がある
・一部で尿路感染症を合併したりするほか, 細菌尿がみられる頻度は低くない


管理
・基本的には自然に治癒するため, 一般的に無症状の例では治療は必要ないとされている
・症状のある患者や完全癒合の患者では治療すべきかもしれないとされている
・治療としては保存的治療と外科的治療があるが, 衛生状態に注意を払うだけでも十分かもしれないことが示されている
・保存的治療としては局所エストロゲン塗布が代表的(成功率50-88%)だが, 日本では製剤が存在しない
・局所エストロゲン塗布の代替治療として局所ベタメタゾン塗布が挙げられる
・外科的切開は保存的治療に反応しない難治例で考慮するとされている



<参考文献>
1) Gibbon KL, Bewley AP, Salisbury JA. Labial fusion in children: a presenting feature of genital lichen sclerosus? Pediatr Dermatol. 1999; 16(5): 388-91.
2) Omar HA. Management of labial adhesions in prepubertal girls. J Pediatr Adolesc Gynecol. 2000; 13(4): 183-5.
3) 松川泰廣, 渡邊健太郎. 乳児早期の陰唇癒合. 日小外会誌. 2008; 44(5): 655-60.
4) Bacon JL, Romano ME, Quint EH. Clinical Recommendation: Labial Adhesions. J Pediatr Adolesc Gynecol. 2015; 28(5): 405-9.
5) Soyer T. Topical estrogen therapy in labial adhesions in children: therapeutic or prophylactic? J Pediatr Adolesc Gynecol. 2007; 20(4): 241-4
6) Mayoglou L, Dulabon L, Schober J, et al. Success of treatment modalities for labial fusion: a retrospective evaluation of topical and surgical treatments. J Pediatr Adolesc Gynecol 2009; 22(4): 247-50
7) Myers JB, Sorensen CM, Koyle MA, et al. Betamethasone cream for the treatment of pre-pubertal labial adhesions. J Pediatr Adolesc Gynecol. 2006; 19(6): 407-11
8) Nurzia MJ, Eickhorst KM, Barone JG, et al. The surgical treatment of labial adhesions in pre-pubertal girls. J Pediatr Adolesc Gynecol. 2003; 16(1): 21-3.
9) Eroğlu E, Yip M, Mocan H, et al. How should we treat prepubertal labial adhesions? Retrospective comparison of topical treatments: estrogen only, betamethasone only, and combination estrogen and betamethasone. J Pediatr Adolesc Gynecol 2011; 24(6): 389-91.

2019年8月26日月曜日

市販の小児用解熱薬について -第1版-

はじめに

小児において解熱薬はもっともよく使用されている薬の1つであると思われる。それは感染症をはじめとする発熱する病気が小児においてよくみられ, また必要度とは別として発熱という症状を軽減することにとても一般的であることが関係しているだろう.

 解熱薬は小児の医療現場においてよく処方される一方, 市販薬としても購入することができる.
 今回はこれらの薬について検討する.




市販されている代表的な小児用解熱薬とその成分

市販の小児用解熱薬はいくつか販売されている. 今回のこれらのうちいくつかを無作為に抽出して検討することとする.
 今回以下の小児用解熱薬について検討した:
こどもパブロン坐薬
ムヒのこども解熱鎮痛顆粒
小児用バファリンCII

 これらは解熱薬の成分としてアセトアミノフェンを使用している. このアセトアミノフェンは小児科で処方される解熱薬の代表的な成分でもある(例: アンヒバ , アルピニー, カロナールなど).
 ちなみにそれぞれに含まれているアセトアミノフェンの量は以下の通りであった:
・こどもパブロン坐薬: 100mg/1個
・ムヒのこども解熱鎮痛顆粒: 150mg/1包
・小児用バファリンCII: 33mg/1錠




それぞれの市販の解熱薬の投与量

それぞれの市販薬について個別に年齢別の投与量について見てみることとする.

<こどもパブロン坐薬>
年齢別投与量:
・6-12歳: 1回100-200mg, 使用回数1日1回
・3-5歳: 1回量100mg, 使用回数1日1回
・1-2歳: 1回量50-100mg, 使用回数1日1回

<ムヒのこども解熱鎮痛顆粒>
年齢別投与量:
・7歳以上11歳未満: 1回150mg, 使用回数1日3回まで, 4時間以上あけて再投与可
・3歳以上7歳未満: 1回100mg, 使用回数1日3回まで, 4時間以上あけて再投与可
・1歳以上3歳未満: 1回75mg, 使用回数1日3回まで, 4時間以上あけて再投与可

<小児用バファリンCII>
年齢別投与量:
・11歳以上15歳未満: 1回約200mg, 使用回数1日3回まで, 4時間以上あけて再投与可
・7歳以上11歳未満: 1回約133mg, 使用回数1日3回まで, 4時間以上あけて再投与可
・3歳以上7歳未満: 1回約100mg, 使用回数1日3回まで, 4時間以上あけて再投与可




市販の投与量についての考察

 上記の市販薬の投与量は. 医療機関で処方される投与量よりも少なくなることが多いと考えられる. ただしこれは市販薬という条件の上で考えられた設定であると思われる.
 アセトアミノフェンの過剰投与は肝障害を引き起こす可能性があり, 肝障害は非常に重篤で命に関わる可能性もある. 従って解熱薬を使用する場合には過剰投与とならないための配慮が特に重要となる
 小児の適切なアセトアミノフェンの投与量は体重を用いて計算される. 従って体重が投与量を決める重要な要素である一方, 市販薬ではわかりやすい基準が求められる. そのため体重ではなくおおよその年齢を基準にしていると思われる.
 小児においては同じ年齢でも体格には個人差がある. 従ってそれらの個人差を考慮しつつ安全性を第一に考えると, 一般的に少な目となる量に設定するのが妥当である.

 ここでは医療機関で処方される投与量はどの程度であるかは言及しない.




まとめ

 小児用の市販の解熱薬は医療機関で処方される解熱薬と成分は基本的に同じであるが投与量は異なることが多いと思われる. しかしこれは「市販薬」という性質を考慮しつつ, 安全性を第一に考えた上で決定されたものであると考えられる.
 以上より市販の解熱薬は性質を理解しつつ, 商品ごとに書かれている使い方を守って使用するのが好ましいと思われる.

2019年8月22日木曜日

2歳以下の小児の短い睡眠時間と2歳での過体重との関連性についての検討

Short Sleep Duration and Later Overweight in Infants. J Pediatr 2019; 212: 13-9


はじめに

・小児における肥満はのちに様々な問題を引き起こすリスクとなることが指摘されている.
・小児の肥満対策の重要性が認識されるようになってきており, 2019年には日本小児科学会は「幼児肥満ガイド」を作成している.

・小児における睡眠時間は様々な要因によって変化が起こっていることが指摘されており, その変化によって健康への影響が引き起こる可能性も考えられている

・小児における睡眠時間と過体重/肥満との関連性も検討が行われており, 様々な研究結果が報告されている. 就学前の小児を対象とした研究では睡眠時間が短いことと長いことが共に過体重/肥満のリスクとなりえることが示唆されている(Wang F et al., 2016)

・若年小児と対象としたデータは乏しく, 今回分析が行われた.






2歳までの小児における短い睡眠時間と, のちの過体重との関連性について分析した前向き研究

方法

概要
・2011年4月から2017年12月まででフィンランドで行われた集団ベース前向き縦断研究(CHILD-SLEEP birth cohort)
 ・2011-2012年の間にフィンランドのTampereから1679の家族が参加した
・両親は子供が出生前と生後3, 8, 18, 24か月の時に質問票に回答
・児に先天奇形, 発達障害, 代謝障害, 成長や睡眠に影響を与えるその他の状態がある場合には研究から除外した

・経過観察中, それぞれの児の年齢ごとに以下の数を分析した:
 ・生後3か月: 1397 (97.2%)
 ・生後8か月: 1277 (88.9%)
 ・生後18か月: 1088 (75.7%)
 ・生後24か月: 889 (61.9%)
・客観的な睡眠の情報を得るために350人では生後8か月でアクチグラフを用いた分析も行った(夜間のみ)
 ・アクチグラフ: 対象者の活動量を単位時間ごとに測定することで睡眠覚醒の状況を知ることができる

・成長のデータは小児の診療所の記録から集めた
・睡眠時間とのちの過体重との関連性を調べるためロジスティック回帰モデルを用いた


定義
・年齢ごとの小児の一般的な正常の睡眠時間の定義は存在せず, フィンランド人での睡眠時間の参考データもないため, もっとも低い四分位数をカットオフ値として短い睡眠時間と正常もしくは長い睡眠時間とを区別した
・年齢毎のカットオフ値:
 ・生後3か月: 13.0時間
 ・生後8か月: 12.5時間
 ・生後18か月: 11.8時間
 ・生後24か月: 11.4時間




結果

・生後3か月での睡眠時間がより短いことは身長あたりの体重が軽いこと, およびBMIがより低いことと関連していた
生後3か月での短い睡眠時間は生後24か月での過体重のリスク上昇と関連していた
 ・生後3か月から24か月間での体重増加が過剰となるリスクも上昇していた
 ・生後8か月(親の報告による), 18か月, 24か月での短い睡眠時間とは関連はみられなかった
・アクチグラフで測定した夜間の睡眠時間が短い児(生後8か月)は生後24か月での過体重のリスク上昇と関連していた

・以下の因子は生後24か月での過体重のリスク上昇と関連していた: 女児, 出生時体重がより重い, 妊娠早期での母のBMIがより高い, 妊娠中の母の喫煙
・年齢, 出生児体重, 性別, 妊娠早期での母のBMI, 両親の教育レベル, 妊娠中の母の喫煙, 生後3か月での母乳栄養を調整したあとでも, 上記で示された関連性はみられた




まとめ

・生後3か月での睡眠時間が短いこと, 生後8か月での夜間の睡眠時間が短いことは, 生後24か月での過体重のリスク上昇と関連しているかもしれない




ちょっと思ったこと

・生後3か月での睡眠時間はどのような影響で変化するか?
 何らかの要因で変化するのであれば, そこに対する介入などが考えられるかもしれない.
・生後24か月での過体重はどのような意義があるか?
 著者らも述べているとおり, 生後24か月まででの経過観察期間は比較的短い. 24か月の過体重は一過性であってのちのリスクとはならないかもしれないので, より長期的なスパンでの評価は求められるだろう.




おまけ

最近発表された興味深い乳児に関係する研究
・乳児における早期の固形食導入は, 児の睡眠をわずかに改善させるかもしれない(JAMA Pediatr. 2018; 172(8): e180739)