川崎病は主に若年の小児でみられる原因不明の血管炎である. 全身性の汎動脈炎が生じることで全身に様々な臨床症候をきたし, 特に川崎病での診断に用いられる主要症状についてはよく知られている.
見られる頻度が高い主要症状以外でも, 比較的頻度の低い臨床所見を伴うことはあり, 「川崎病診断の手引き 改訂第6版」でも参考条項の欄に多数記載されている.(*1)
その中で爪に関しては「爪の横溝」の記載があるのみだが, 実際には様々な爪病変に関しても報告されており, 今回著者らはこれらに注目して症例報告と文献レビューを行う報告している.
著者らは過去の報告をレビューして, 川崎病に関連した爪病変を以下の5つに分類している:
・Beau’s line: 爪を横切る小さな溝としてみられる. 爪の成長とともに移動する.
・爪甲白斑症: 爪甲における白色調の変化で, 全体的なものから部分的なものまでいくつかタイプがある
・爪甲脱落症: 爪母からの爪の自然剥離
・橙褐色のクロモニキア: 急性期や亜急性期の早期に観察される爪の色調変化(クロモニキア)で, 橙褐色となっているもの.
・巻き爪変形: 川崎病の亜急性期に観察される, 爪の長軸に沿ったカーブ状の変形. 四肢の末梢循環障害と関連していると考えられている.
これらの爪病変のうちで橙褐色のクロモニキアの頻度が最も高そうであると推定され, 著者らによる自験例3例も報告されている.
またそれらの3例中2例ではダーモスコピーの所見で爪床の点状もしくは線状の出血を伴っていたことも述べている.
川崎病でこれらの爪病変がみられる頻度は高くないと推定され, 実際に診断マーカーとして用いることができるかは現時点では不明である.
ただ川崎病を疑う際には四肢末梢の変化についても確認する必要があるので, その時に少しだけ爪の変化の有無についても確認すると興味深い所見が得られるかもしれない.
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