背景
・最近の研究で, 症状や診察所見のみでは肺炎の診断の予測には不十分であることが示唆されている(JAMA 2017; 318(5): 462-71)・多くの場合には胸部X線(CXR)所見に基づいて肺炎と診断することになる.
・肺炎の場合にはCXRで何らかの肺炎の所見を認めることが多いものの,
・肺炎の病初期
・脱水を伴っている
といった場合にCXRで肺炎の所見がみられないかもしれないという懸念がある. そのため, 肺炎の所見が見られない場合でも抗菌薬が投与される, ということがある.
・今回の研究では肺炎が疑われた症例で小児での胸部X線の陰性的中率について検討している.
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Susan CL, Michael CM, Mark IN, et al. Negative Chest Radiography and Risk of Pneumonia. Pediatrics 2018; 142(3): e20180236.
方法
・24か月間にわたって都市部の小児救急外来で行われた前向き観察研究・対象: 肺炎が疑われて胸部X線(CXR)撮影が行われた3か月から18歳までの小児
・CXR撮影は医師の裁量で決定された
・以下の児は除外した:
・肺炎やその他の理由で抗菌薬をすでに投与されている児
・肺炎に罹患しやすい基礎疾患を有する児
・CXRは小児放射線科医によって読影され, 所見により以下のように分類された:
・肺炎の所見あり
・肺炎の所見ははっきりしない
・肺炎の所見なし
・肺炎の所見がはっきりしない症例に関しては, 肺炎の所見なしとしては分類しなかった
・救急外来受診後, 4-7日と10-14日に電話かEメールで保護者と連絡をとった
・連絡時には様々な質問を行った他, 受診後に肺炎と診断されたかどうかについて質問した
結果
・683人が研究の対象となった・児の年齢の中央値は3.1歳で, 21.4%が入院した
・救急外来受診で200人(29.3%)が肺炎と診断された
・臨床的に肺炎と診断された156人のCXR所見: 78%が肺炎の所見があるかはっきりせず, 22% (44人) では肺炎の所見はなかった
CXR所見
・683人でのCXR所見:
・肺炎の所見あり 16.5%
・肺炎の所見がはっきりしない: 10.7%
・肺炎の所見なし: 72.8%
・肺炎の所見があったかはっきりしない児と比較して肺炎の所見がなかった児ではラ音の聴取や呼吸窮迫がみられる頻度が低く, wheezesがみられる頻度が高かった
CXR所見と救急外来での対応
・肺炎の所見があった児の96%, はっきりしなかった児の66%が肺炎と診断された
・肺炎の所見がなかった児(497人)のうち8.9%(44人)は臨床的に肺炎と診断された(救急外来受診時に)
・42人はその他の理由(最多は急性中耳炎)により抗菌薬で治療された
・救急外来受診時には411人が肺炎と診断されず, かつ抗菌薬治療も行われなかった
・411人のうち74人(18%)は入院した
・wheezingや呼吸窮迫がみられることが入院の多くの理由だった
・wheezingや呼吸窮迫がみられることが入院の多くの理由だった
・411人のうち363人(88.3%)ではその後の経過を知ることができた
・受診後1週で93.8%の児が改善していて, 64.8%は完全に正常に戻っていた
・受診後2週では81.5%の児が完全に正常に戻っていた
・受診後2週までで最終的に5人(1.2%)が肺炎と診断されていた
・CXRの陰性的中率(NPV)は98.8%であった
・受診後1週で93.8%の児が改善していて, 64.8%は完全に正常に戻っていた
・受診後2週では81.5%の児が完全に正常に戻っていた
・受診後2週までで最終的に5人(1.2%)が肺炎と診断されていた
・CXRの陰性的中率(NPV)は98.8%であった
・抗菌薬が処方された症例の含めてもNPVは同等であった
・のちに肺炎と診断された5人は全員3歳未満で, 4人は発熱が出現してから1日以内で救急外来を受診していた
・のちに肺炎と診断された5人は全員3歳未満で, 4人は発熱が出現してから1日以内で救急外来を受診していた
まとめ
・肺炎が疑われた症例において, 胸部X線で肺炎の所見がみられなかった場合には肺炎の可能性は極めて低く, 抗菌薬は不要かもしれない
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