2018年8月15日水曜日

風疹についてのまとめ

はじめに

日本では2020年までの風疹ゼロプロジェクトが進行中であり, 国としても風疹の予防に力を入れていますが日本では時々風疹の流行が報告されています.
今回は風疹の臨床像と, 風疹の予防で重要な予防接種を中心にまとめています.



風疹の病態形成


<要約>
・風疹の潜伏期間は通常14-18日です
・風疹ウイルスは発疹が出現する1-2週間前から排泄されているため, 風疹を発症する前から他の人に感染させる可能性があります.


 風疹の潜伏期間は通常14-18日ですので, 感染した人と接触してから14-18日くらいで発症するということです.1)
 風疹ウイルスは風疹を発症する1-2週間前から排泄が始まります. つまり風疹を発症する1-2週間前から他の人に換算させる可能性があります.



風疹の症状


<要約>
・小児期に風疹にかかると一般的には軽症か, あるいは症状がでないことも少なくないです
・症状としては発熱やリンパ節腫脹, 特徴的な発疹がみられることが多いです.
・合併症が起こることは少ないですが, 合併症の代表例としては脳炎があります.


 小児期に風疹にかかっても一般的に軽症で, 症状がみられない不顕性感染も少なくないです. ちなみに発疹は25-40%の症例でみられないです2)
 症状としては発疹が出る数日前から微熱やリンパ節腫脹がみられることがあり, その後発疹が出現します.
 発疹は顔から始まって, 24時間以内に体幹や手足に広がっていきます. 発疹は通常3日程度続きますが, より長い場合もあります.
 合併症が起こることは少ないですが稀にみられます. 合併症の代表例としては脳炎などが挙げられます.



メモ
<成人の風疹>
 成人での風疹は一般的に小児よりも症状が強く長くなる傾向があります. また思春期以後の女性では関節痛/関節炎を併発しやすいことが知られており, 70%程度で発生するとされています.

<風疹の合併症>
 風疹の合併症としては感染後血小板減少, 風疹脳炎, 進行性風疹全脳炎が挙げられます.
 感染後血小板減少は発生率は約1/3000で小児や女児で発症しやすいです. また発疹出現後2週間程度で発症しますが, 通常自然治癒します.2)
 風疹脳炎は約1/6000で発生する合併症で, 免疫の関与が示唆されています.
 風疹脳炎21例を検討した研究では, 95.2%がけいれんを1回以上起こしており, 76.2%が痙攣重積を起こしています. 生存例では予後が良いことが示唆されていますが, 2例(9.5%)の死亡例もあり致死的となりえる合併症です.3)
 進行性風疹全脳炎は非常に稀な合併症ですが, 予後不良で2-5年で死亡します.






先天性風疹症候群について


<要約>
・先天性風疹症候群は風疹の中でもっとも大きな問題となる病気です.
・妊娠20週までの妊婦が初めて風疹にかかった場合に起こることがあります.
・主な症状としては難聴, 先天性心疾患, 小頭症, 先天性白内障などがありますが, 児によって症状は場は広いです.


 先天性風疹症候群は風疹の中でもっとも大きな問題となる病気です. 妊娠20週までの妊婦が初めて風疹にかかった場合に起こることがあるもので, 生まれつき様々な症状をかかえる場合があります.
 具体的な症状としては難聴, 先天性心疾患, 小頭症, 白内障など様々ですが, 児によってみられる症状は異なります.



メモ
<先天性風疹症候群の臨床像>
先天性風疹症候群の主な臨床症候と頻度:4)
・難聴 (60%)
・先天性心疾患 (45%)
 ・動脈管開存 (20%)
 ・末梢性肺動脈狭窄 (12%)
・小頭症 (27%)
・白内障 (25%)
・低出生体重児 (23%)
・肝脾腫 (19%)
・紫斑 (17%)
・精神発達遅滞 (13%)
・髄膜脳炎 (10%)
・放射線透過性骨 (7%)
・網膜症 (5%)






風疹の診断・管理


<要約>
・風疹の診断は一般的に血液検査で行われます.
・風疹に治療薬はなく, 症状にあわせた対症療法が行われる場合があります.
・風疹は第2種の学校感染症に定められており, 発疹が消失するまで出席停止となります






風疹の予防


<要約>
・予防接種が風疹の予防に効果的です.
・予防接種の一番の目的は先天性風疹症候群を予防することがです.


 風疹の予防には予防接種が効果的です. 風疹に対しては現在定期接種での予防接種が行われており, 1歳以降と就学前1年での2回の接種が推奨されています.
 予防接種は個々の疾患により様々な目的がありますが, 一番の目的は先天性風疹症候群を予防することです. もちろん疾患の発症を予防する目的もあります.

 では妊娠する可能性のある女性が予防接種を受けていれば良いのかといえば, それでは対策としては不十分です. なぜなら
・何らかの事情で予防接種を受けていない場合,
・ワクチンに対する反応性がない, あるいは弱くて免疫が不十分
という人が少ないものの存在するためです.
 そのため, それらの女性に感染させないためには日頃から流行が発生しないように, それ以外の人もワクチンを接種しておいた方が好ましいです.

 ちなみにワクチンを接種した場合に起こる副反応としては接種部の発赤や疼痛, 発熱や発疹, リンパ節腫脹などが知られていますがいずれも一過性です.
 また成人で接種した場合には関節炎や関節痛が出現することがありますが, 慢性化することは稀です.



メモ
<子供のうちに自然にかかればよいのでは?>
 子どものうちに風疹にかかれば軽症ですむから, 子供のうちに自然感染しておけば, という考えがありますが, 少なくとも以下の点でリスクを伴います:
・子どもで風疹になった場合でも, 軽症ではないことがある
・流行を作り出すことで, 何らかの事情で免疫が不十分な妊娠女性に流行にさらされる
 自然感染させるということはリスクが高いため, 予防接種による予防が必要となります.

<2回目の風疹ワクチンの役割>5)
 2回目の風疹ワクチン接種の役割は1回目の接種で反応が得られなかった児に対して反応を起こさせることを目的にしているようです. 1回目のワクチン接種で十分な抗体価が得られたなかった場合でも, 多くの場合は2回目で十分な抗体価を得ることが期待されるようです.
 また, 2回目接種はブースターとしての目的とは考えられていません. 確かに2回目のワクチン接種によりブースター効果で抗体価が上昇する場合がありますが, その効果は持続しないとということが示されているためです.





<参考文献>
1) Red Book 2015
2) NELSON Textbook of Pediatrics 20th edition
3) Child Rubella Encephalitis: Diagnosis, Management, and Outcome. J Child Neurol 2014; 29(1): 49-53

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