4-7歳の上気道疾患の臨床像とウイルス検出, および副鼻腔炎の合併の頻度について検討した前向き研究
背景
・上気道疾患(URI)は小児期で最もよくみられる感染症による疾患である.・上気道疾患は時に肺炎や急性中耳炎, 急性副鼻腔炎を続発するが, 急性副鼻腔炎が発生する頻度はこれまであまり報告はなかった.
・多くの急性副鼻腔炎は急性上気道炎に続発して発生するが2), 6-36か月の小児を対象としたアメリカでの前向き縦断コホート研究では上気道感染症に罹患後, 8%で急性副鼻腔炎を合併していた1)
・今回の研究では, 4-7歳の小児を対象として研究を行なっている.
方法
・2か所の小児プライマリケア施設での観察コホート研究
・以下の時期に鼻から検体を採取:
・症候性上気道疾患での受診時
・無症状時でのサーベイランス時(2月, 4月, 9月, 12月)
・鼻から採取した検体は9種類の呼吸器ウイルスについてPCRで分析
・副鼻腔炎の診断基準: 以下のいずれかを満たす場合を副鼻腔炎と判断する
・鼻汁や咳嗽などの呼吸器症状が10日以上持続して改善しない(persistent)
・重篤な症状(膿性鼻汁に加えて体温39℃以上の発熱)が少なくとも72時間以上みられる
・明らかな改善後の呼吸器症状や発熱の急性増悪(worsening)
結果
・48-96か月の小児236人が対象となり, 全員で327回URIに罹患した
・小児1人あたりのURIの平均罹患率は1.3回/年(範囲: 0-9回)
・ウイルスはURIの81%で検出された
・ライノウイルス(RV)がもっとも発見された頻度が高いウイルスで, 49%(161/327)で認めた
・複数のウイルスは12%で認めた
・無症状時のサーベイランスのためのPCRは236人に対して725回行われた
・ウイルスは33%で検出された
・RVがもっとも発見された頻度の高いウイルスで, 25%(179/725)で認めた
・無症状時と比較して症候性URI時ではRV-AやRV-Cが検出される割合が高かった(p<0.001)
URIの症状
・327回のURIのうち89%で鼻閉と鼻汁がみられた(最も頻度が高い)
・その他の症状(頻度): 日中の咳嗽(75%), 夜間の咳嗽(64%), 咽頭痛(26%), 発熱(21%), 嘔吐(9%), 下痢(4%), 発疹(3%)
・URIの症状は3日目がピークであった
・発熱の平均期間は1.5日(範囲1-5日)
・10日目および15日目までに, それぞれ72%,
94%の患者で症状が消失していた
副鼻腔炎
・327回のURIのエピソードのうち29回(8.8%)で副鼻腔炎の基準を満たした
・15回が上述のpersistent, 14回がworseningの基準を満たした
まとめ
・ライノウイルスは呼吸器症状がある場合でもない場合でも検出される割合が高いウイルスであるが,
RV-AやRV-Cは症候性URI罹患時に検出される頻度が高い
・症状は10日程度経過すれば多くの患者でみられなくなってくる.
・副鼻腔炎は上気道疾患の8.8%で合併した参考文献
1) Acute Bacterial Sinusitis Complicating Viral Upper Respiratory Tract Infection in Young Children. Pediatr Infect Dis J 2014; 33(8): 803-8
2) Acute sinusitis in children. Pediatr Clin North Am. 2013; 60(2): 409-24
改訂
・2018/11/16: 見出し「背景」を追加
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