2022年8月26日金曜日

けいれん重積型(二相性)急性脳症に予測的な脳波所見

・熱性けいれんでは特にけいれんが長時間に及ぶことがあり熱性けいれん重積と呼ばれていれう.
・熱性けいれん重積では特にその他の発熱とけいれん(重積)をきたす他の疾患との鑑別が重要となってくる.
・特に鑑別が重要となってくる疾患の1つとしてけいれん重積型(二相性)急性脳症(Acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion; AESD)が挙げられる.
・早期発見および早期介入が予後改善に寄与するか否かのエビデンスは乏しいものの, 早期に予測することは管理上は有用であると考えられる.
・そういった背景から熱性けいれん重積症例とAESD症例とを早期に鑑別する予測因子が探索され予測スコアが提唱されてきている(*1-3)が, 確立された精度の高い予測方法はいまだに存在しない.
・今回の研究では熱性けいれん重積とAESDの早期の鑑別に有用な脳波所見について検討している.


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けいれん重積型(二相性)急性脳症: 予測的な脳波検査所見



方法 (Methods)
2009年1月から2017年8月までに愛知県の4つの大学病院と15の関連病院でAESDもしくは持続する熱性けいれん(Prolonged Febrile Seizurs: PFSs)のいずれかと診断された6歳未満の小児を対象とした後ろ向き研究

診断と定義
・AESDは以下を満たすものを定義した:
 ・発熱に伴う発作の出現
 ・数日後の群発する発作(二相目の発作)および意識障害
 ・二相目の発作後の頭部MRIの拡散強調画像での皮質下白質の異常高信号
・持続するけいれん(PFSs)は発熱により誘発された以下のいずれかのものと定義した:
 ・20分以上続くけいれん発作
 ・発作間で意識の回復がないけいれん群発(初回のけいれん発作の開始から最後のけいれん発作までをけいれん持続時間とした)
・てんかんの既往がある児や頭部MRIで異常があった児はPFSsから除外した.

脳波検査所見の評価
・すべての脳波検査は2人の小児神経専門医によって評価された.
・従って, 年齢とそれぞれのEEGの記録時期以外の臨床情報は盲検化され, それぞれ独立して評価した. 独立した評価ののち, 解釈の相違については合意のもので解決された.
・正常の基礎律動は以下のとおりとした:
 ・1歳未満: ≧5Hz
 ・1-3歳: ≧6Hz
 ・3-5歳: ≧7Hz
・基礎律動の非対称は半球間の振幅の差が50%以上と定義された.
・4Hz未満の徐波を異常な徐波(slowing)とした
・紡錘波は以下のように分類された:
 ・正常
 ・半球での減少: 反対側と比べて片側での紡錘波が70%以上減少
 ・消失
・速波(≧14Hz)は以下のように分類された:
 ・正常
 ・減少: 睡眠中に70%以上減少
 ・消失



結果 (Results)
・研究期間中, 発症後48時間以内に脳波の記録が行われたのはAESDの児22例, PFSsの児58例であった. このうち脳波のデータはそれぞれ14例, 31例を用いることができ, これらを対象とした.
・けいれん発作からEEG記録までの時間の中央値はAESDで15時間(四分位範囲 9-24時間), PFSsで16時間(四分位範囲 11-26時間)であった.
・発症時のけいれん発作の時間, 発症から脳波記録までの時間, 脳波記録時間, GCSはAESDとPFSsの児で明らかな差はなかった.
・脳波記録中に陳製薬や抗てんかん薬を使用した割合はAESDの児の方がPFSsよりも高かった(50% vs 13%, p = 0.020).

脳波検査所見
<覚醒時/刺激による覚醒中>
・覚醒/刺激による覚醒中の脳波所見はAESDの児9例(64%), PFSsの児23例(74%)でみられていた.
・基礎律動における異常や覚醒/刺激による覚醒中での徐波に関してはAESDとPFSsで明らかな違いはなかった.

<睡眠中>
・睡眠中の脳波所見はAESD 14例(100%), PFSs 29例(94%)で評価された.
紡錘波の半球での減少や消失がみられる頻度はAESDの児の方がPFSsの児よりも高かった(71% vs. 31%, p = 0.021)
 ・陽性/陰性的中率はそれぞれ0.53, 0.83であった
速波の減少や消失がみられる頻度はAESDの児の方がPFSsの児よりも高かった(21% vs 0%, p = 0.030)
 ・速波の減少や消失がみられた3例ではいずれも紡錘波の減少や消失も伴っていた.
 ・陽性/陰性的中率はそれぞれ1.00, 0.73であった
・すべてのタイプの異常な徐波(slowing)の割合はAESDとPFSsで明らかな差はなかったが, 持続的もしくは高頻度の異常な徐波(slowing)がみられる割合はAESDの方がPFSsよりも高かった(50% vs. 17%, p = 0.035)
 陽性/陰性的中率はそれぞれ0.58, 0.77であった
・AESD, PFSsのいずれも鎮静薬や抗てんかん薬が用いられた例があったが, その使用の有無で脳波所見に明らかな違いはなさそうだった.



結論 (Conclusion)
・脳波所見はAESDとPFSsの鑑別に有用かもしれない.
・睡眠中の紡錘波や速波の減少や欠損, および持続的もしくは高頻度の異常な徐波(slowing)は発熱に関連した持続的なけいれん発作を起こした小児においてAESDを示唆しているかもしれない


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・さらなる検証は必要であると思われるが, 両者の鑑別には有用となりえる知見ではないかと思われた.
・持続脳波モニタリングほどではないが, 早期の脳波検査の実施やその判読には施設間で差が存在すると思われるため, 今後使用していく上ではそういった課題となっていくかもしれない.


<参考文献>





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