はじめに
・小児における肥満はのちに様々な問題を引き起こすリスクとなることが指摘されている.・小児の肥満対策の重要性が認識されるようになってきており, 2019年には日本小児科学会は「幼児肥満ガイド」を作成している.
・小児における睡眠時間は様々な要因によって変化が起こっていることが指摘されており, その変化によって健康への影響が引き起こる可能性も考えられている
・小児における睡眠時間と過体重/肥満との関連性も検討が行われており, 様々な研究結果が報告されている. 就学前の小児を対象とした研究では睡眠時間が短いことと長いことが共に過体重/肥満のリスクとなりえることが示唆されている(Wang F et al., 2016)
・若年小児と対象としたデータは乏しく, 今回分析が行われた.
2歳までの小児における短い睡眠時間と, のちの過体重との関連性について分析した前向き研究
方法
概要・2011年4月から2017年12月まででフィンランドで行われた集団ベース前向き縦断研究(CHILD-SLEEP birth cohort)
・2011-2012年の間にフィンランドのTampereから1679の家族が参加した
・両親は子供が出生前と生後3, 8, 18, 24か月の時に質問票に回答
・児に先天奇形, 発達障害, 代謝障害, 成長や睡眠に影響を与えるその他の状態がある場合には研究から除外した
・経過観察中, それぞれの児の年齢ごとに以下の数を分析した:
・生後3か月: 1397 (97.2%)
・生後8か月: 1277 (88.9%)
・生後18か月: 1088 (75.7%)
・生後24か月: 889 (61.9%)
・客観的な睡眠の情報を得るために350人では生後8か月でアクチグラフを用いた分析も行った(夜間のみ)
・アクチグラフ: 対象者の活動量を単位時間ごとに測定することで睡眠覚醒の状況を知ることができる
・成長のデータは小児の診療所の記録から集めた
・睡眠時間とのちの過体重との関連性を調べるためロジスティック回帰モデルを用いた
定義
・年齢ごとの小児の一般的な正常の睡眠時間の定義は存在せず, フィンランド人での睡眠時間の参考データもないため, もっとも低い四分位数をカットオフ値として短い睡眠時間と正常もしくは長い睡眠時間とを区別した
・年齢毎のカットオフ値:
・生後3か月: 13.0時間
・生後8か月: 12.5時間
・生後18か月: 11.8時間
・生後24か月: 11.4時間
結果
・生後3か月での睡眠時間がより短いことは身長あたりの体重が軽いこと, およびBMIがより低いことと関連していた・生後3か月での短い睡眠時間は生後24か月での過体重のリスク上昇と関連していた
・生後3か月から24か月間での体重増加が過剰となるリスクも上昇していた
・生後8か月(親の報告による), 18か月, 24か月での短い睡眠時間とは関連はみられなかった
・アクチグラフで測定した夜間の睡眠時間が短い児(生後8か月)は生後24か月での過体重のリスク上昇と関連していた
・以下の因子は生後24か月での過体重のリスク上昇と関連していた: 女児, 出生時体重がより重い, 妊娠早期での母のBMIがより高い, 妊娠中の母の喫煙
・年齢, 出生児体重, 性別, 妊娠早期での母のBMI, 両親の教育レベル, 妊娠中の母の喫煙, 生後3か月での母乳栄養を調整したあとでも, 上記で示された関連性はみられた
まとめ
・生後3か月での睡眠時間が短いこと, 生後8か月での夜間の睡眠時間が短いことは, 生後24か月での過体重のリスク上昇と関連しているかもしれないちょっと思ったこと
・生後3か月での睡眠時間はどのような影響で変化するか?何らかの要因で変化するのであれば, そこに対する介入などが考えられるかもしれない.
・生後24か月での過体重はどのような意義があるか?
著者らも述べているとおり, 生後24か月まででの経過観察期間は比較的短い. 24か月の過体重は一過性であってのちのリスクとはならないかもしれないので, より長期的なスパンでの評価は求められるだろう.
おまけ
最近発表された興味深い乳児に関係する研究・乳児における早期の固形食導入は, 児の睡眠をわずかに改善させるかもしれない(JAMA Pediatr. 2018; 172(8): e180739)
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