Pediatr Infect Dis J 2019; 38(1): 1-5
新生児・乳児早期でのヒトパレコウイルス3型感染症の臨床データと神経学的経過を評価したオーストラリアでの後ろ向き研究
ヒトパレコウイルス3型(HPeV3)は新生児や生後3か月未満で敗血症様疾患や髄膜脳炎を引き起こし1), これらが注目されるようになってきている.
急性期には主に易刺激性や頻脈, 発熱, 紅斑, 腹部膨満といった症状がみられやすいことが知られている2)3).
フランスでの研究ではHPeV3による髄膜脳炎症例の約40%で神経学的後遺症を残したことが報告されている4). また髄膜脳炎症例だけでなく, 敗血症様疾患の症例でも神経学的後遺症を残す可能性があることがオランダの研究で示唆されている5).
今回の研究では, HPeV3感染症のデータと神経学的経過について評価を行っている.
急性期には主に易刺激性や頻脈, 発熱, 紅斑, 腹部膨満といった症状がみられやすいことが知られている2)3).
フランスでの研究ではHPeV3による髄膜脳炎症例の約40%で神経学的後遺症を残したことが報告されている4). また髄膜脳炎症例だけでなく, 敗血症様疾患の症例でも神経学的後遺症を残す可能性があることがオランダの研究で示唆されている5).
今回の研究では, HPeV3感染症のデータと神経学的経過について評価を行っている.
方法
・2013年11月から2016年6月までにオーストラリアのクイーンズランドで診断されたHPeV感染症の全症例が対象となった.
・PCRにて確認されたもので診断を行っている,
・様々なデータを診療録から後ろ向きに収集して検討した.
・発達に関する経過観察の時期や方法は標準化されていなかった.
結果
・対象となった症例は202例あった.
・HPeV PCRが陽性となった検体
・髄液 142検体
・臨床情報がわかる145例中104例(90.4%)で陽性だった
・その他の検体で臨床情報がわかる検体において:
・便: 検査を行なった63例中56例(88.9%)が陽性だった
・呼吸器: 検査を行なった29例中25例(86.2%)が陽性だった
臨床症候
・臨床情報がわかる145例で検討した
・入院時, 127例(87.5%)が生後3か月未満で, 54例(37.2%)が新生児(生後28日未満)だった
・33例(22.7%)がICUに入院した
・主な臨床症状と頻度:
・易刺激性: 94.5%
・頻脈: 88%
・哺乳不良: 87.6%
・発熱: 82.1%
・発疹: 74.5%
・14例(9.7%)は発症時から第3病日までにけいれん発作を起こした
経過
・145例中77例(53.1%)で, 急性期後4-12週間隔で一般小児外来での経過観察が予定された
・評価が行われたうち11例で神経発達的問題が特定された
・67例で聴力の評価が行われたが, 感音性難聴は1例もなかった
・神経学的問題がみられた児では. 新生児期に発症した, 症状としてけいれん・発熱・無呼吸みられた, あるいは早産の既往があった割合がより高いようであった.
・さらに神経学的問題がみられた児では, 急性期にICU入院や侵襲的呼吸補助や強心剤の投与を必要とした割合が高いようであった.
神経画像検査
・入院中に20例で頭部MRIが施行され, 15例で異常がみられた:
・もっとも頻度の高い所見は深部白質における拡散制限であった.
・頭部MRIで異常所見がみられた15例中, 7例では経過観察中に神経学的問題が特定され, 8例では問題はみられていなかった(経過観察期間は6-15か月)
・7例中5例では, 急性期以後の頭部MRIで継続して異常所見がみられた
・頭部MRIで正常だった5例中4例では経過観察中に神経学的問題はみられていなかった.
・頭部超音波検査は14例で施行され, 13例では異常所見はみられなかった:
・8例はその後頭部MRIが施行され, 7例で異常所見を認めた
・HPeV PCRが陽性となった検体
・髄液 142検体
・臨床情報がわかる145例中104例(90.4%)で陽性だった
・その他の検体で臨床情報がわかる検体において:
・便: 検査を行なった63例中56例(88.9%)が陽性だった
・呼吸器: 検査を行なった29例中25例(86.2%)が陽性だった
臨床症候
・臨床情報がわかる145例で検討した
・入院時, 127例(87.5%)が生後3か月未満で, 54例(37.2%)が新生児(生後28日未満)だった
・33例(22.7%)がICUに入院した
・主な臨床症状と頻度:
・易刺激性: 94.5%
・頻脈: 88%
・哺乳不良: 87.6%
・発熱: 82.1%
・発疹: 74.5%
・14例(9.7%)は発症時から第3病日までにけいれん発作を起こした
経過
・145例中77例(53.1%)で, 急性期後4-12週間隔で一般小児外来での経過観察が予定された
・評価が行われたうち11例で神経発達的問題が特定された
・67例で聴力の評価が行われたが, 感音性難聴は1例もなかった
・神経学的問題がみられた児では. 新生児期に発症した, 症状としてけいれん・発熱・無呼吸みられた, あるいは早産の既往があった割合がより高いようであった.
・さらに神経学的問題がみられた児では, 急性期にICU入院や侵襲的呼吸補助や強心剤の投与を必要とした割合が高いようであった.
神経画像検査
・入院中に20例で頭部MRIが施行され, 15例で異常がみられた:
・もっとも頻度の高い所見は深部白質における拡散制限であった.
・頭部MRIで異常所見がみられた15例中, 7例では経過観察中に神経学的問題が特定され, 8例では問題はみられていなかった(経過観察期間は6-15か月)
・7例中5例では, 急性期以後の頭部MRIで継続して異常所見がみられた
・頭部MRIで正常だった5例中4例では経過観察中に神経学的問題はみられていなかった.
・頭部超音波検査は14例で施行され, 13例では異常所見はみられなかった:
・8例はその後頭部MRIが施行され, 7例で異常所見を認めた
まとめ
・HPeV3感染症罹患後, 神経学的問題がみられる症例は稀ではなかった・急性期での頭部MRIで異常所見がみられた症例において, 経過観察中に神経学的問題がみられた症例が多くみられていた. ただその一方で異常所見がなかったうちでも神経学的問題がみられた症例も存在し, また頭部MRIが施行された例は限定的であったことなどから, さらなる検討は必要だろう.
参考文献
1) Human parechovirus infection, Denmark. Emerg Infect Dis. 2014; 20(1): 83-7
2) Human parechoviruses as an important viral cause of sepsislike illness and meningitis in young children. Clin Infect Dis. 2008; 47: 358-63
3) Human parechovirus 3 causing sepsis-like illness in children from midwestern United States. Pediatr Infect Dis J. 2011; 30: 238-42
4) Human parechovirus causes encephalitis with white matter injury in neonates. Ann Neurol 2008; 64: 266-73
5) Cerebral imaging and neurodevelopmental outcome after entero- and human parechovirus sepsis in young infants. Eur J Pediatr. 2017; 176(12): 1595-1602
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