2018年7月19日木曜日

乳児におけるインフルエンザAの予防のためのビタミンDの効果

Preventive Effects of Vitamin D on Seasonal Influenza A in infants: A Multicenter, Randomized, Open, Controlled Clinical Trial
Pediatr Infect Dis J 2018; 37(8): 749-54


乳児におけるインフルエンザAの予防のためのビタミンDの効果と安全性を評価した中国での多施設無作為非盲検対照試験

背景

・ビタミンDは骨や腎臓, 腸管などに作用することで血清カルシウム値を上昇させるように作用しますが, 近年, 免疫反応やその他様々な作用も報告されるようになり, それにともなっていろいろな疾患との関連性についても示されています.
・感染症において, 標準量と高用量でのビタミンD補充で1-5歳での冬季急性上気道炎の頻度を検討した研究では, 上気道炎の頻度を減らさなかったと報告しています(JAMA 2017; 318(3): 245-54)
・一方, 小児と成人を対象とした, ビタミンD投与における急性呼吸器感染症の予防効果を検討したメタアナリシスでは予防効果があることが示されており(BMJ 2017; 356: i6583), 結果は一定していません.
・季節性インフルエンザは例年冬季に流行がみられる重要な感染症の1つであり, 特にリスクの高い人においては重症化して死亡する例もあります.
・今回の研究では, 乳児におけるインフルエンザAに対するビタミンD投与の効果と安全性について評価しています.



方法

・2015年10月から2016年5月までの間で健康管理の経過観察目的に小児科外来を受診した生後3-12か月の乳児400人が対象となった
・乳児を無作為に低用量ビタミンD投与群(400IU/日)と高用量ビタミンD群(1200IU/日)に分けた
・4か月間, 決められたビタミンDの量を連日内服
・インフルエンザが疑われる症例では速やかに小児感染症外来を受診して, ELISAを用いて咽頭分泌液で呼吸器ウイルス抗原の存在が評価された
・抗ウイルス薬は使用しなかった




結果

・低用量群168人, 高用量群164人で分析が行われた
・児の平均年齢は7.8±2.6歳


臨床所見
・4か月間の経過観察期間中, 157症例でインフルエンザ様症状がみられた
 ・ELISAでは125例, PCRでは121例のインフルエンザA感染症が特定された
  ・PCRがインフルエンザA感染症の確定にもっとも信頼できる検査方法だと判断された
・PCR陽性の121例のうち, 低用量群は78例, 高用量群は43例であり, 低用量群で有意に多かった
・低用量群と比較して高用量群では発熱, 咳嗽, 喘鳴の持続時間の中央値が短かった


ウイルス量
・1, 4, 7病日で咽頭スワブからのサンプルでのウイルス量をRT-PCRで評価したところ, 4, 7病日で高用量群の方がウイルス量は少なかった


安全性
・4人で嘔吐や下痢といった中毒の可能性のある症状がみられた
 ・症状がみられる時の血清Ca, P, 25-hydroxyvitamin D値は正常であったため, ビタミンDとは関連なさそうであると考えられた



まとめ

・高用量ビタミンD投与群ではインフルエンザ症状が短縮しており, 経過中のウイルス量も少なかった
・ビタミンD投与による大きな副作用はみられなかった

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