はじめに
・ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus : hMPV)は2001年に発見されたウイルスで, 主に小児において発熱や鼻水, 咳などの起こす呼吸器感染症の原因の1つとして知られている.・hMPVはパラミクソウイルス科のウイルスであるが, 同じパラミクソウイルス科のウイルスであるRSウイルス(RSV)と似た臨床像がみられる
・一方で, hMPVはRSVとはやや異なる特徴もあることが知られるようになってきている.
・hMPVでは時に急性細気管支炎や肺炎を引き起こし, 重篤となりえることもある.
・今回の研究では, 重症な臨床像と関連する因子について分析している.
Role for Maternal Asthma in Severe Human Metapneumovirus Lung Disease Susceptibility in Chilndren. J Infect Dis 2020 Jan 22.
ヒトメタニューモウイルスによる重症肺疾患にかかりやすくなる要因について分析したアルゼンチンの研究
方法
・前向き多施設アクティブサーベイランス研究・研究期間: 2011-2013年
・場所: Buenos Airesにおける低所得地域
・対象となった児: 重症下気道感染症(LRTI)に罹患し入院した2歳未満の児
・以下の1つ以上満たすものをLRTIの定義:
・突然発症した咳嗽, wheezing, 陥没呼吸や聴診でcracklesが聴取される
・発熱の有無は問わない
・救急外来到着時にroom airで酸素飽和度(SpO2)<93% もしくは酸素投与を必要とする
・以下の1つ以上満たすものを重篤な疾患(Life-threatening Disease : LTD)と定義した:
・入院時SPO2≦87%
・人工呼吸管理やICUへの入院を必要とした
・鼻咽頭吸引液を入院時に採取して, リアルタイム逆転写PCR (RT-PCR)を用いてhMPVの検査を行った
・同時にRSウイルス(RSV), ヒトライノウイルス(hRV), インフルエンザウイルスの検査を行った.
結果
・4045人が基準を満たし, 最終的に3947人が研究に参加した
・3947人中383人でhMPVが検出された
・383人中75人(20%)はRSV, 64人(17%)はhRV, 1人はインフルエンザも重複感染していた
・6人はhMPV, RSV, hRVに同時に感染していた
・84%は入院時に1歳未満であった(平均年齢7.4か月)
・入院例のうち10.2%はLTDであった(平均年齢 6か月)
・母に喘息がない場合と比較して母に喘息がある場合, hMPVに感染している児ではLTDとなる割合は高かった
・RSVやhRV, インフルエンザAでは明らかな差はみられなかった
まとめ
重症なhMPVによる下気道感染症で入院した2歳未満の児において, 母に喘息の既往のある児ではより重症な肺疾患となりやすいかもしれない.
以前にNoteでヒトメタニューモウイルスについてのQ&Aを記事にしていますので, そちらも参考にして頂ければと思います.
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