はじめに
・急性リウマチ熱(acute rheumatic fever: ARF)は溶連菌性咽頭炎の有名な合併症の1つとして知られている.・溶連菌性咽頭炎にペニシリン10日間投与がARF予防に効果的であることが知られ, その治療が確立されてからARFに罹患する患者は非常に少なくなった.
・ただしARF患者がまったくいなくなったわけではなく, むしろ患者が少なくなったことによって診断に至るまでに遅れが出たりするリスクがあると考えられる. ARFでは様々な臨床像がみられ, 特に心炎は重要な臨床像の1つである.
・今回の研究では, 高所得国であるイタリアにおける, 近年の急性リウマチ熱を, 特に心炎に着目して検討している.
Carditis in Acute Rheumatic Fever in a High-Income and Moderate-Risk Country. J Pediatr 2019
近年での急性リウマチ熱(acute rheumatic fever: ARF)における心炎について分析したイタリアでの研究
方法
・2003年1月から2015年9月までにARFと診断された患者の単施設後ろ向き研究・対象患者: 4-15歳
・ARFが疑われた患者では包括的な心臓の精査が行われた:
・身体診察
・心電図検査(ECG)
・心臓超音波検査
診断
・ARFの診断:
・2015年以前に受診した患者では1992年のJonesの基準に診断していた
・2015年のJonesの基準はその後の診断で用いていた
・心炎の診断: 以下の1つ以上を満たすものと定義し:
・新たな病的な心雑音
・心臓超音波検査での病的な弁逆流
結果
・98人(そのうち男児が63.3%)の患者が研究に登録された・診断時の平均年齢は8.81±3.04歳であった
・ARFの症状出現から診断までの期間は0.98±0.85か月であった
・入院時, 咽頭培養は19.8%で陽性, 64.8%が陰性であった(15.4%は実施していない
・98人中59人(60.2%)に咽頭感染症の既往があり, そのうち48人(81.3%)で抗菌薬投与が行われていた
・投与されていた抗菌薬の種類:
・ペニシリン: 54.1%
・マクロライド: 16.7%
・セファロスポリン: 8.5%
・マクロライド/セフォロスポリン併用: 4.2%
・その他の組み合わせの治療: 14.6%
・抗菌薬治療の平均期間は5.9±3.1日であった
・マクロライド系を除くと, 6.2±2.5日であった
・抗菌薬投与を受けていた48人のうち28人(58.3%)ではその後に心炎を発症していた
心炎について
・診断時, 57.1%で心炎を発症していた
・心炎を発症していた患者では以下のような臨床所見が併存していた:
・関節炎: 57.1%
・輪状紅斑: 10.7%
・舞踏病: 21.%
・26.8%では心臓超音波検査でのみ異常がみられた心炎であった
・僧帽弁逆流は87.6%でみられた:
・軽度: 36.7% / 中等度: 32.7% / 重度: 30.6%
大動脈弁逆流は64.3%でみられた:
・軽度: 63.9% / 中等度 27.8% / 重度: 8.3%
・51.8%の患者では大動脈弁逆流と僧帽弁逆流が併存していた
まとめ
・溶連菌性咽頭炎における急性リウマチ熱の予防方法は確立されているものの, 未だに発症する患者は存在する・発症患者で投与されていた抗菌薬の期間は短い傾向があり, 急性リウマチ熱発症と関連があるかもしれない
・ARF患者の約半数で心炎がみられ, 多くの患者で弁逆流が認められた
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