2019年8月29日木曜日

陰唇癒合の程度が強い方が尿路感染症により罹患しやすいかもしれない

Labial adhesion and urinary tract problems: The importance of genital examination. J Pediatr Urol. 2016; 12(2): 111.e1-5



陰唇癒合(LA)のある女児での尿路感染症について分析したトルコでの研究

方法

・Kocaeli Derince Teaching and Reseach HospitalのPediatric Nephrology departmentに尿路の訴えやその他も問題で入院した女児で, LAと診断された女児
・期間は2010年10月から2012年10月
・診察した医師は以下のようにLAを分類した:
 ・厚さ: 薄い, 厚い(中等度, 密)
 ・程度: 完全, 部分
  ・開口部分が小さくピンポイントである重症なものを完全と定義した




結果

・46人の女児が対象となった
・初診時の平均年齢は51.9±37.6か月で, 平均経過観察期間は24.4±5.5か月
・46人のうち
 ・厚さは34人が薄く, 11人が中等度で, 1人が密であった
 ・範囲は21人が部分的で, 25人が完全であった

・27人(58.7%)に尿路感染症の既往があった
・尿路感染症の既往がある27人では
 ・厚さは15人が薄く, 12人が厚かった
 ・範囲は6人が部分的で, 21人が完全であった

・完全癒合の群の25人のうち21人(84%)で尿路感染症の既往があった一方, 部分的癒合の群の21人のうちで尿路感染症の既往があったのは6人(28.6%)であった(P < 0.05)
・厚い癒合の群の12人全員で尿路感染症の既往があった一方, 薄い癒合の群の34人のうち15人(44.1%)で尿路感染症の既往があった(P < 0.05)
・厚さは厚い方が, 範囲は完全な方が尿路感染症を起こした数は多かった




まとめ

・陰唇癒合の厚さや範囲という点で症状が強い方が尿路感染症に罹患しやすく, また罹患する回数も多いかもしれない.





陰唇癒合(Labial adhesion : LA)  - 個人的なまとめ

・陰唇癒合(labial adhesion : LA)は正中線上での小陰唇の部分的もしくは完全な癒合で, 小児期, 特に乳幼児期に起こる.
・陰唇癒合は海外での主だった報告では発症率が1%前後とされており, よくみられる状態であるとされている.
・日本では報告は少なく比較的稀であると考えられている一方, 松川らの報告では3か月健診を受けた女児の0.86%で発見されており, 頻度は想定されているよりも高い可能性があることも示唆されている
・陰唇癒合の発症年齢のピークは0-1歳頃


病因
・生まれた後に発症するとされている.
・低年齢での低エストロゲン状態が発症に関連していると考えられており, これに刺激などによる炎症によって癒合が起こると想定されている


臨床症候
・排尿障害などが症状としてみられることはあるが, 日本でまとまって数で検討された研究では多くは無症状であった.
 ・特に低年齢では無症状の割合が高い可能性がある
・一部で尿路感染症を合併したりするほか, 細菌尿がみられる頻度は低くない


管理
・基本的には自然に治癒するため, 一般的に無症状の例では治療は必要ないとされている
・症状のある患者や完全癒合の患者では治療すべきかもしれないとされている
・治療としては保存的治療と外科的治療があるが, 衛生状態に注意を払うだけでも十分かもしれないことが示されている
・保存的治療としては局所エストロゲン塗布が代表的(成功率50-88%)だが, 日本では製剤が存在しない
・局所エストロゲン塗布の代替治療として局所ベタメタゾン塗布が挙げられる
・外科的切開は保存的治療に反応しない難治例で考慮するとされている



<参考文献>
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