2018年11月13日火曜日

ノロウイルスによる軽症胃腸炎関連けいれんの発生率と特徴

Incidence and characteristics of norovirus-associated benign convulsions with mild gastroenteritis, in comparison with rotavirus ones. Brain Dev. 2018; 40(8): 699-706

軽症胃腸炎関連けいれん(CwG)において, ロタウイルスが原因のCwGと比べた場合のノロウイルスが原因のCwGでの特徴などを検討した韓国での後ろ向き研究


胃腸炎に伴う無熱性けいれんを起こす病気のうちで, その他のけいれんの原因がないものを軽症胃腸炎関連けいれん(CwG)と呼ばれる.

ロタウイルスワクチン導入以前, CwGの原因としてはロタウイルスがもっとも多かった(40-50%)ことが数多く報告されている1).

しかし, ロタウイルスワクチンにはロタウイルスによる胃腸炎関連けいれんを減少させることが報告されており2), 以前の韓国の研究でもロタウイルスワクチン導入後, CwGの原因に占めるロタウイルスの割合が低下していることが指摘されている3).
その一方で, 相対的にノロウイルスが最も多い原因となっていることも示されている.

今回の研究では以前に最も多い原因であったロタウイルスによるCwGと, 現在最も優位となっているノロウイルスによるCwGを比較し検討している.





方法

・2014年3月から2017年2月までの間でChonnam National University Hospital (CNUH)に入院した生後3か月から3歳までのCwG患者の診療記録を後ろ向きに分析した
・CwGは以下の項目を満たすものと定義:
 ・急性胃腸炎症状を伴う無熱性けいれん
 ・低血糖, 電解質異常, 髄液検査異常がない
 ・発達は正常
 ・脳波検査(EEG)所見は正常か軽度な異常のみ
 ・脳画像検査正常
・ノロウイルスとロタウイルスによるCwGを比較するため, 2005年3月から2014年2月までの症例も合わせて検討した





結果

最近3年でのウイルスの検出状況
・2014年3月から2017年2月までの間で42人がCwGと診断されていた
・42人のうち40人(95.2%)で便検査が施行されていた
・40人のうち32人(80%)の便検体からウイルスが検出された:
 ・ノロウイルス: 27人 (67.5%)
 ・ロタウイルス: 3人 (7.5%)
 ・アデノウイルス: 2人 (5.0%)


ノロウイルスとロタウイルスによるCwGの臨床像の比較
・140人が対象となった: (原因ウイルスと人数は以下の通りだった)
 ・ノロウイルス: 44人
 ・ロタウイルス: 26人
・どちらのウイルスによるCwGも冬(12月-2月)に多くみられた
 ・ノロウイルス: 63.6%
 ・ロタウイルス: 46.2%
・春にみられる頻度はノロウイルスの方が低かった
・全CwG患者において, けいれん発症時に嘔吐は82.9%, 下痢は85.7%でみられていた
 ・ロタウイルスによるCwGと比べて, ノロウイルスによるCwGでは嘔吐がみられていた割合が高かった(97.7% vs 80.8%)
消化器症状出現からけいれん発症までの期間はノロウイルスによるCwGの方がロタウイルスによるCwGよりも短かった(2.00±1.06日 vs 2.58±1.21日)

・けいれん群発は68.6%でみられ, ウイルス別ではノロウイルスによるCwGの時に頻度が高い傾向はみられた(p = 0.05)
 ・ノロウイルス: 79.5%
 ・ロタウイルス: 57.7%
・ほとんどの症例でけいれんの持続時間は5分未満だった


脳波検査(EEG)所見
・多くの症例ではEEG所見は正常であったが, ロタウイルスによるCwGと比較して後頭部徐波がみられる頻度はノロウイルスによるCwGで高かった(11.5% vs 34.9%)





まとめ

・CwG症例の便検体の多くからノロウイルスが検出された
・ノロウイルスが原因のCwGではロタウイルスによるものと比べて以下のような特徴があるかもしれない:
 ・春にみられる頻度が低い
 ・発症時までの消化器症状として嘔吐がみられている頻度が高い
 ・消化器症状出現からけいれん発症までの期間が短い
 ・脳波検査で後頭部徐波がみられる頻度が高い



参考文献

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