2018年5月28日月曜日

光線療法の治療閾値を下回る新生児黄疸に対する光線療法

Efficacy of Subthreshold Newborn Phototherapy During the Birth Hospitalization in Preventing Readmission for Phototherapy.
JAMA Pediatr 2018; 172(4): 378-85

再入院を予防を目的とした治療閾値を下回る新生児黄疸に対する光線療法を評価したアメリカでの後ろ向き研究
・カリフォルニアでの16の施設のいずれかで出生した在胎35週以降に出生した新生児を対象とした後ろ向き研究
 ・出生後7日以上入院していた児は除外
・研究期間: 2010年1月1日-2014年12月31日
・光線療法の治療閾値は米国小児科学会(AAP)で発表されているものを使用
 ・日本では一般的にはAAPの基準は使用されていないと思われます
・出生後の入院で1回以上閾値から血清総ビリルビン(TSB)値が0.1-3mg/dL下回った新生児を分析した




結果

・研究期間中に対象となった新生児171777人のうち, 29488人でTBS値が測定されていた
・そのうち基準を満たさない児を除外して, 25895人が分析の対象となった
・TSB値が光線療法の治療閾値を0.1-3.0mg/dL下回った児のうち:
 ・4956人(19.1%)で光線療法が行われていた(予防的光線療法)
 ・2931人(11.3%)が光線療法のために再入院していた
・予防的光線療法を受けた児では受けなかった児と比較して入院期間が有意に長かった(平均入院期間: 75.8時間 vs 50.4時間)
 ・様々な要因の調整後では22時間長かった

・退院後の再入院率:
 ・予防的光線療法を受けた児: 4.9% (241/4956)
 ・予防的光線療法を受けなかった児: 12.8% (2690/20939)
・退院後の再入院率は予防的光線療法を受けた児で有意に低く, 様々な要因の調整後ではオッズ比 0.28であった
再入院予防のためのNNTは14.1であった (14.1人に光線療法を行うと1人の再入院を減らすことができる)
 ・危険因子を組み合わせた場合, もっともリスクが低い児と高い児でのNNTはそれぞれ6.3, 60.8であった

・再入院率を上昇させていた因子:
 ・男児
 ・短い在胎週数
 ・アジア人
 ・補助された経腟分娩
 ・光線療法の家族歴
 ・治療閾値に近いTSB値
 ・TSB値測定時により低い年齢
 ・完全母乳栄養
・再入院率を低下させていた因子:
 ・低出生体重
 ・帝王切開
 ・直接抗グロブリン検査(DAT)陽性
 ・家庭での光線療法
・出生後の入院中, 人工栄養を与えられていた頻度が高いほど再入院率は低かった

・出生後の入院中に光線療法を受けたなかった児20939人のうち:
 ・退院後にTSB値が光線療法の基準値を上回った: 3887人(18.6%)
 ・退院後にTSB値が光線療法の基準値を2mg/dL以上上回った: 801人(3.8%)
 ・退院後にTSB値が交換輸血の基準値を上回った: 35人(0.2%)




まとめ

・ 治療閾値を下回る場合での光線療法は再入院を予防する効果はあった一方, 多くの児に対しては不要な治療であった




補足

・今回のアメリカでの研究はそのまま日本にあたはめることができません. それは新生児黄疸の罹患のしやすさ, 出生後の入院期間, 光線療法の治療閾値やその他様々な要因の違いがあるためです.
・ただし, 日本においてもおそらく一定の予防効果があると推測される一方, 多くの場合は不要な治療となってしまう可能性がある点では同様かと思います. 光線療法も有益無害とも言い切れないため, 必要な児をいかにうまく選択できるようになるかは今後も検討が必要だと思われます.

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