2018年5月14日月曜日

難聴のみを認める先天性サイトメガロウイルス感染症に対するバルガンシクロビル治療の有用性

Valganciclovir Is Beneficial in Children with Congenital Cytomegalovirus and Isolated Hearing Loss.
J Pediatr 2018; Mar 28


感音性難聴(SNHL)のみ認める先天性サイトメガロウイルス(cCMV)感染症の児の抗ウイルス薬の効果を後ろ向きで評価したイスラエルでの研究
・イスラエルのSchneider Children’s Medical Centerで行われた小児コホートの後ろ向き研究
 ・Schneider Children’s Medical Centerはイスラエルでもっとも大きい小児病院
・2005年1月から2017年5月までにフォローされたcCMV感染症の児全員のデータを再検討された
・生後2週までに採取された尿検体を用いて, 尿培養陽性あるいはPCR陽性の場合にcCMV感染症と診断された:
・聴力検査は生後4週までに行われた
・生後4週までの聴力検査で異常が発見された児は最低1年間フォローされ, 生後12週までに抗ウイルス薬治療が開始されていた
・CMVによるその他の症状・徴候を認める場合には除外された
・SNHLのみを認める患児は以下のいずれかのうち1つのプトロコールで治療された:
 1. ガンシクロビル 5mg/kg/日 静注 6週間
  → バルガンシクロビル 17mg/kg 1日2回内服 6週間
  → バルガンシクロビル 17mg/kg 1日1回内服 12か月間の治療完了まで
 2. ガルガンシクロビル 17mg/kg/ 1日2回内服 12週間
  → バルガンシクロビル 17mg/kg 1日1回内服 12か月間の治療完了まで 




結果

・研究期間中, 329人がcCMV感染症で抗ウイルス治療を受けていた
・329人中, 59人(18%)がSNHLのみを認め, 今回の研究の基準を満たした
・難聴の状態: 38人(64.4%)が片側性, 21人(35.6%)が両側性であった

転帰
・ベースラインで障害された80の耳のうち, 55 (68.8%)が改善し2 (2.5%)のみが悪化した
 ・悪化した2つはいずれも中等度から重度の難聴となっていた
改善した耳のほとんど(53/55, 96.3%)は正常に戻っていた
・中等度以上の難聴と比較して軽度の難聴の方が改善する割合が高かった:
 (難聴の程度; 改善率)
 ・軽度: 92.6%
 ・中等度: 70%
 ・重度: 15.7%
・機能的な評価では, 以下の通りであった:
 ・片側性の38人は正常に戻ったと考えられた
 ・両側性の21人のうち16人(76.1%)が改善して, 悪化した児はいなかった
  ・改善した16人のうち15人(93.7%)は正常に改善した
・79.6%の児が生後4週未満で治療が開始されていた
・2つの治療内容で聴力の転帰に有意差はみられなかった

副作用
・治療の主な副作用は好中球減少(好中球絶対数<1000/mm3)であった
 ・19人の児で30回の好中球減少のエピソードが起こった
  ・主に治療開始後3か月以内で発生した
 ・2つの治療内容で副作用の発生率に差はなかった
・抗ウイルス治療を2-3日間中止すると好中球絶対数は正常に戻った




まとめ


バルガンシクロビルは先天性サイトメガロウイルスで難聴のみ認める小児において有益であるかもしれない

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