2018年3月21日水曜日

小児の発熱 Q&A

Question


1. どれくらいから熱があると判断したらよいでしょうか?
2. 発熱と高体温はどのように違うのでしょうか?
3. 熱が下がらない, あるいは高熱が続いていて心配なのですが?
4. 発熱は体にどのような影響があるのでしょうか?
5. 「触って熱がある」と思った場合, どのくらい正確なのでしょうか?
6. 新生児で環境による体温上昇と発熱を区別する方法はありますか?




どれくらいから熱があると判断したらよいでしょうか?


 発熱はとてもよくみられる症状ですが, 一般的に受け入れられた発熱の定義は存在しないです. 現実的に用いられる定義としては
・口腔で測定した体温>38℃
・直腸や鼓膜で測定した体温>38.4℃
というものが知られています.
 日本では腋下で測定した体温が一般的だと思われますが, やはり何℃を発熱とするかということは決まっていません. 腋下で測定した体温は上記のものよりも低くなる傾向があることはわかっています. ただし, 基本的には体温≧38.0℃で発熱していると判断するのがよいかと思われます.
 それより低い体温でも発熱していると考える場合もありますが, 小児では午後や運動後に37℃台となる可能性があることが知られていますので, 過度に発熱を心配してしまう可能性があるため, 発熱はないと考えても基本的には問題ないかと思われます.

 ちなみに体温は1日の中で変動していて, 通常4-5時頃が1番低く, 夕方頃が1番高くなります. また発熱している場合でもこのパターンに従うことが多いです.




発熱と高体温はどのように違うのでしょうか?


 発熱(fever)と高体温(hyperthermia)は同じ意味ではありません.
 発熱体が体温を上げようとしている反応であるため, 十分に調節されており危険なものではありません(ただし, 発熱の「原因」は危険な可能性はあります). 発熱単独では体温は41℃を上回ることはほぼないと言われてます. 例としては風邪などの様々な感染症や, 自己免疫性疾患など多くの体温上昇を起こす原因でみられます.
 一方, 高体温は正常なメカニズムの体温調節に障害を起こした状態であるため, 調節がうまくいっていないため危険なものとなる可能性があります. 高体温では41℃を超える可能性が, 42℃を超えると様々な臓器に影響を与えるとされています. 高体温の例としては熱中症や悪性高体温が挙げられます.

 ちなみに研修医などには「体温上昇」「発熱」「高体温」は区別して用いるように教えています.




熱が下がらない, あるいは高熱が続いていて心配なのですが?


 発熱のデメリットとしては, 脱水や眠気が強くなるといったことの原因となりえることが知られています. ただし, 上述の通り発熱自体は危険なものではありません.
 熱が下がらない, もしくは高熱であると重症感染症がより心配となるかもしれませんが, どちらも重症感染症を示しているわけではありません. もちろん重症感染症の可能性はありますが, それは発熱の程度が軽い場合でも同様です.

発熱自体は危険ではないが, 発熱の原因は危険かもしれない. 熱の高さよりも子供がどのように活動しているかの方が重要である」(Moffet's Pediatric Infectious Diseases 5th edition)




発熱は体にどのような影響があるのでしょうか


 感染症に対してはいくつか有益な影響があることが知られています. 例としては以下のようなものが挙げられます:
・白血球運動性が亢進
・いくらかのウイルスや細菌が殺される
 ・淋菌やいくらかのトレポネーマは40℃を超えると殺菌される
・natural killer(NK)細胞の活動性が亢進
・抗菌薬による殺菌能の増強
・インターフェロンの効果が増強
 様々な発熱の効果が知られていますが, 実際に発熱していることにより早く治るなどの経過において有益性であることが示されたことはありません.




「触って熱がある」と思った場合, どのくらい正確なのでしょうか?


 いくらかの研究が知られています. あまり体温を測定した経験がないと思われるザンビアでの研究では陽性的中率39%陰性的中率95%であったと報告されています. また, アメリカでの3か月未満の児を対象とした研究では陽性的中率59%. 陰性的中率93%であったと報告されています.
 まとめれば,
触って熱があると感じる → 熱があるとは限らない(あまり信頼できない)
触って熱がないと感じる → 熱がない可能性が高い(およそ信頼できる)
ということになります.

Diagnosing fever by touch: observational study. BMJ 1998; 317: 321-30
Fever determination in young infants: prevalence and accuracy of parental palpation. Pediatr Emerg Care 2009; 25: 12-4




新生児で環境による体温上昇と発熱を区別する方法はありますか?


 足と腹部を触って判断するテクニックは知られています.
 足と腹部を触って
・両方の温かさが同じ程度 → 環境による体温上昇
・足が冷たくて腹部が温かい → 発熱と末梢の血管収縮
の可能性を示唆している, とされています. ただし, 新生児の発熱はリスクが高いため, この所見はあくまでも参考程度にとどめるのがよいと思われます.

PEDIATRICS SECRETS 5th edition





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