2018年3月20日火曜日

小児の呼吸器感染症の症状の持続期間



背景

・小児にとって呼吸器感染症はもっともかかる頻度の高い感染症の1つである.
・呼吸器感染症の罹患したとき, 症状がよくならなかったら受診・再診してくださいと説明されることがあるが, 実際にはどのくらい症状が続くことが問題ないのかははっきりしない. 
・症状が続く場合, 肺炎や急性中耳炎, 急性副鼻腔炎の続発が疑われる場合がある. 急性副鼻腔炎は小児の上気道感染症の罹患後の約8%に合併したという報告がある1)2).

・その一方で, 通常の経過であっても症状が続くことによって, 不要な検査や治療が行われる可能性も出てくるため, 一般的な自然経過でどの程度症状が続くかということは重要である.






Duration of symptoms of respiratory tract infections in children: systematic review.
BMJ 2013; 347: f7027


小児における呼吸器感染症の症状の期間を分析したシステマティックレビュー


方法

・小児における耳痛, 咽頭痛, 咳嗽, 感冒の症状の期間を分析した
・対象となった研究はプライマリケアや救急外来で急性呼吸器疾患と診断された小児の無作為対象試験(RCT)や観察研究
・小児で症状がなくなるまでの期間を検討した




結果

23RCT25の観察試験が基準を満たして, これらを用いて分析した


耳痛
50%の小児は3, 90%の小児は7-8までに症状は消失した:


咽頭痛
・咽頭痛の持続した期間の平均は1-6.7日で, 90%の小児は2-7で症状は消失していた
33-37%の児は3日目で咽頭痛が続いていた


咳嗽(急性咳嗽, 気管支炎, クループ)
・咳嗽の持続した期間の平均は1-25
50%の小児は10, 90%の小児は25までに急性咳嗽の症状は消失した
・クループの症状の平均は2-3
50%の小児は1, 90%の小児は2で症状は消失していた
・気管支炎における咳嗽の持続した期間の平均は8-15
50%の小児は10, 90%の小児は21までに気管支炎の症状は消失した


感冒
・感冒症状の持続した期間の平均は7-15
50%の小児は10, 90%の小児は約15で症状は消失していた





まとめ

・呼吸器感染症罹患後, ほとんどの小児は以下のような期間までにそれぞれの症状は消失していた:
 ・耳痛: 7-8
 ・咽頭痛: 2-7
 ・急性咳嗽: 25
 ・クループ: 2
 ・気管支炎: 21
 ・感冒症状: 15





個人的感想

・複数の研究で結果は様々ですが, わかることは一般的な疾患であっても, 症状は思っているよりも続く可能性があるということです.
・残念ながらこれらの症状の期間を短縮するのに有効な薬というものは基本的にないのですが, これらの症状が他疾患の合併などにより続いている可能性については注意が必要でしょう.


参考文献
1) Acute Bacterial Sinusitis Complicating Viral Upper Respiratory Tract Infection in Young Children. Pediatr Infect Dis J 2014; 33(8): 803-8
2) Clinical Features, Virus Identification and Sinusitis as a Complication of Upper Respiratory Tract Illness in Children Ages 4-7 Years. J Pediatr 2016; 171: 133-9.e1

改訂
2018/11/16: 小見出し「背景」を追加


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