2018年3月12日月曜日

アルカリホスファターゼ(ALP)と一過性高ALP血症

アルカリホスファターゼについて

ALPは分子量12-15万の糖蛋白で, 蛋白部分は2量体
・活性中心にZn2+を含む代表的な亜鉛酵素であり, Mg2+で活性化される
 ・亜鉛欠乏症では血清ALP低下を引き起こすことがある
・生体内では腎 (近位尿細管), 小腸 (粘膜上皮), 骨芽細胞, 胎盤, (毛細胆管), 乳腺などに比較的高濃度に存在する

ALPは遺伝学的には以下の4種類のアイソザイムに分類される:
 ・非特異性ALP(ALP1-2: 肝臓, 胆管とALP3: )
  ・小児ではALP3が約85%を占める
 ・胎盤ALP (ALP 4)
 ・小腸ALP (ALP 5)
  ・血液型のB型やO型の分泌型で, 食事(特に脂肪食)摂取で上昇する
 ・胚細胞AL
・電気泳動ではALPのアイソザイムはALP 1-6で分けられ, ALP 6ALP結合性免疫グロブリン由来であり, 潰瘍性大腸炎患者で上昇することがある

・小児(特に思春期)や妊娠時には生理的な上昇がみられる
 ・小児に関しては年齢により基準値は異なるため注意が必要
血液型B, O型の分泌型では食後に生理的な上昇をきたすので, 原則として空腹時採血とする




一過性高ALP血症(TH)

概要
・一過性高アルカリホスファターゼ血症は主に健康な乳幼児に見られる, 原因不明の一過性のALP上昇をきたす疾患
・過剰なシアル化による血中からのクリアランス低下が原因として考えられている


疫学
・前方視的研究では2.8%でみられたとする報告があり, 日本でも後ろ向き研究では0.26%との報告がある. システマティックレビューでは2-24か月の小児での発生率は1.1-3.5%であった7).
・2013年のシステマティックレビューでは, THは健康な乳幼児におけるもっともよくみられる高ALP血症の原因であった7)
・好発年齢: 13-18か月
 ・3歳未満が82%を占める
・危険因子:
 ・先行するウイルス感染症
 ・体重増加不良
 ・最近のビタミンD状態の変化
・多くは秋から冬にかけてみられる


診断・検査
Krautらの定義
 ・5歳以下
 ・骨・肝疾患によらない
 ・骨性および肝性ALPアイソザイムが上昇
 ・4か月以内に基準値レベルに回復するもの
・通常ALPは成人基準値の30-70に達する
・ALPのアイソザイムを分析した研究では, ほとんどの児では骨性アイソザイムの上昇がみられていた8)

管理・予後
・病的意義はないと考えられており, かつ自然治癒するため鑑別疾患に注意しつつ経過観察する.
・2013年のシステマティックレビューでは80%の症例は4か月以内に正常範囲に戻っていた7)



Reference
1) アルカリホスファターゼ. 小児内科 2012; 44(5): 796-799.
3) Viral infection of infants and children with benign transient hyperphosphatasemia. FEMS immunol Med Microbiol 2002; 33: 215-218.
4) Transient hyperphosphatasemia of infancy and childhood. A study of serum alkaline phosphatase by electrofocusing techniques. Arch Pathol Lab Med 1995; 119: 784-789.
6) What is the cause of benign transient hyperphosphatasemia? A study of 35 cases. Clin Chem 1988; 34: 335-40

0 件のコメント:

コメントを投稿