2018年3月14日水曜日

小児のA群β溶連菌による急性中耳炎

Acute Otitis Media Caused by Streptococcus pyogenes in Children.
Clin Infect Dis 2005; 41(1): 35-41


小児のStreptococcus pyogenes (A群β溶連菌; GAS)による急性中耳炎(AOM)を分析したイスラエルでの前向き研究
・中耳貯留液の検体が採取され培養された0-18歳のAOM患者が対象
・中耳貯留液の検体は鼓膜穿刺で採取したか耳漏から得たもの
・病原体はS. pneumoniae, H. influenzae, M. catarrhalis, GASのみとした




結果

・患者の平均年齢は14.8±19.1か月(中央値は10.7か月)
AOM11311エピソードのうち350 (3.1%)GASが培養陽性となった
 ・350エピソード中117ではその他の病原体も培養陽性となった
  ・その他の細菌はS. pneumoniae (n = 34), H. influenzae (n = 55), M. catarrhalis (n = 1), 2種類以上の組み合わせ(n = 27)
GASによるAOM患者の年齢の中央値はその他の病原体によるAOM患者よりも高かった
 ・GAS単独感染: 16.7か月
 ・GASとその他の細菌との混合感染: 15.2か月
GAS陽性となるエピソードの割合は年齢と共に上昇していた
 ・12か月未満: 1.9%
 ・12-23か月: 3.5%
 ・24か月以降: 7.4%
・より高い年齢とユダヤ系がGASによるAOMの危険因子であった

臨床像
GASによるAOM患者ではその他の病原体のAOM患者と比較して以下のような特徴がみられた:
 ・発熱, 嘔吐を伴う割合が低い
 ・その他の上気道感染症の徴候を伴う割合が低い
 ・片側性の割合が高い
 ・過去1か月以内で抗菌薬治療が行われていた割合が低い
GASによるAOM患者では多くが鼓膜穿孔を伴っていた
乳様突起炎を合併するリスクがその他の病原体よりもGASによるAOMで高い




まとめ

・年齢とともにAOMの原因におけるGASの占める割合は上昇する
・GASによるAOMでは発熱や嘔吐や伴うことや両側性であること割合は低く, 鼓膜穿孔を伴うことが多い




個人的感想

・GASによるAOMではその他の病原体によるAOMと比較していくつかの臨床像での違いはあるようですが, 実際に臨床像のみで区別することはできません. しかし現在の治療戦略であればGASによるAOMを特別に注意する必要はありません.
・24か月以降だとGASの占める割合は7.4%であり, 頻度がとても低いというわけでもないようです.

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