Febrile
urinary-tract infection due to extended-spectrum beta-lactamase-producing
enterobacteriaceae in children: A French prospective multicenter study
PLoS One 2018;
13(1): e0190910
小児のESBL産生腸内細菌(ESBL-E)が原因の発熱を伴う尿路感染症(FUTI)について評価した前方視的研究
・24の小児施設でのESBL-Eが原因の小児(18歳以下)のFUTIの管理について評価したフランスでの前向き観察研究
・研究期間: 2014年3月-2017年3月
・診断基準は以下の3つを用いた:
・フランスの推奨: パック尿を含めたいずれかの採尿方法で採取した尿検体において以下のすべてを満たした場合にFUTIと診断
・膿尿≧104/mL
・培養陽性≧105/CFU
・欧州泌尿器学会/欧州小児泌尿器学会(EAU/ESPU)のガイドライン: 以下のいずれかを満たした場合にFUTIと診断
・中間尿で培養陽性≧104/CFU
・カテーテル尿で培養陽性≧103/CFU
・膀胱穿刺尿で培養陽性(レベルは問わず)
・米国小児科学会(AAP): 以下を満たす場合にFUTIと診断:
・カテーテル尿か膀胱穿刺尿で培養陽性≧5×104/CFU
結果
・3年間でESBL-E株が尿から分離される頻度は0.8-10%/年であった
・3施設を除いて時間経過で頻度に変化はなかった
・3年間で301人の小児が登録され, 以下の人数がそれぞれの基準により診断された:
・フランスの推奨: 283人(うちパック尿で診断したものは46%)
・EAU/ESPUのガイドライン: 151人
・AAPのガイドライン: 87人
・基準毎の児の年齢の中央値: 1歳(フランスの推奨), 2.14歳(EAU/EAPU)
・原因微生物はE. coliが約90%, K.
pneumoniaが約10%で, その他の病原体は1-2例程度であった
・CRPとプロカルシトニンの中央値はそれぞれ7.5mg/dL(0.1-40.4mg/dL), 1ng/mL(0-110ng/mL)
・血液培養は58.1%で施行され, 4%が菌血症と診断された
・静注薬の薬剤感受性:
・アミカシン: 88.7%
・ゲンタマイシン: 60%
・ピペラシリン/タゾバクタム: 74.7%
・内服薬の薬剤感受性:
・cotrimoxazole(ST合剤): 29.6%
・シプロフロキサシン: 51%
・エンピリック治療において選択された抗菌薬と割合:
・第三世代セフェム系: 35.3%
・単三世代セフェム系+アミノグリコシド系(ゲンタマイシンかアミカシン): 40.2%
・アミカシン: 13%
・カルバペネム系: 4.3%
・感受性判明後に選択された静注抗菌薬と割合:
・アミカシン: 24%
・カルボペネム(ゲンタマイシン併用の有無を問わず): 18.6%
・ピペラシリン/タゾバクタム(ゲンタマイシン併用の有無を問わず): 3.6%
・内服薬としてはST合剤とキノロン系がもっとも使用される頻度が高かった
・オーソドックスではないアモキシシリン/クラブラン酸-セフィキシム合剤は31.3%で投与されていた
・解熱までの期間の中央値は1.8日(0-10日)で, 入院期間の中央値は3.4日(SD 4.6)(0-38日)
・95%の患者が5日以内に解熱し10日以内合併症や再発を認めなかった
・初期の抗菌薬が効果的であった症例と効果的ではなかった症例で解熱までの期間や入院期間に差はなかった
・尿路奇形の有無で解熱までの時間や入院期間に差はなかった
まとめと個人的見解
・本文献ではカルバペネムの代替薬としてアミカシンが有用かもしれないとしていますが, 日本ではESBL産生菌に対してはセフメタゾールが選択される頻度が高いのはないかと思います. ちなみに今回の文献ではセフメタゾールの感受性に関しては検討されていません.
・初めて知ったのですが, フランスの推奨ではパック尿での検体も尿培養提出も用いて問題ないようです. それもあり, 米国小児科学会の基準を用いた場合とで大きく患者数が異なります. 個人的にはパック尿での尿培養はコンタミネーションのリスクが低くはないと考えていますので, 今回の臨床経過などの解釈には注意が必要かもしれません.
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