・腹部片頭痛は小児・思春期における機能的消化管障害(functional gastrointestinal disorders; FGID)のうちの機能的腹痛障害(functional abdominal pain disorders)のうちの1つ.
・小児では慢性的な反復性腹痛がみられることは少なくなく, またそのうち明らかな気質的原因が発見されない例も少なくない. 反復性腹痛がみられることは大きな問題となり得るため, それらを引き起こす原因も管理などの考慮すると重要となってくる.
・小児では慢性的な反復性腹痛がみられることは少なくなく, またそのうち明らかな気質的原因が発見されない例も少なくない. 反復性腹痛がみられることは大きな問題となり得るため, それらを引き起こす原因も管理などの考慮すると重要となってくる.
疫学
・発生頻度: 小児の1-4%で発症するとされている9)が, 日本での報告は少ない
・日本に限らず過小診断されている可能性が指摘されている
・Rome IIIと比べてRome IVの診断基準を用いると腹部片頭痛の有病率が低下する可能性が指摘されている11)
・Rome IIIと比べてRome IVの診断基準を用いると腹部片頭痛の有病率が低下する可能性が指摘されている11)
・発症年齢: 3-10歳(8歳頃に好発)
・性差: 性差はないかわずかに女性に多い8)
・家族歴: 60-90%に片頭痛の家族歴がある
・両親に乗り物酔いの既往があることも多い
臨床症候
・発作時には腹痛を主症状として認める
・腹痛は2-72時間持続する
・臍周囲にみられることが多いが, 局在性がはっきりしないこともある
・その他に随伴する症状としては嘔吐(特に多い)や下痢, 顔面蒼白, 聴覚過敏, 光過敏などがみられることがある
・嘔吐の程度は周期性嘔吐症よりも軽い
・顔面蒼白は目の周囲にクマを伴うことが多い
・一部の患者では顔面紅潮が目立つことがある
・非発作時は健常である
・発作は3か月から6年間持続する
・発作は散発的にみられるが, 規則的にみられることもある
・主な誘発因子: ストレス, 食事を抜かすこと, 脱水, 不規則な睡眠習慣, 旅行, 運動
診断
診断基準・現在では2016年に発表されたRome IVの診断基準が用いられている10)
腹部片頭痛の診断基準
以下の項目を少なくとも満たす状態が2回以上発生しなければならない 1. 急にみられる, 1時間間以上続く強い臍周囲, 正中部もしくはびまん性の腹痛(非常に重篤で苦痛を伴う症状であるべき) 2. 腹痛エピソードの間隔は数週間から数か月空いている 3. 腹痛により動けなくなるほどであり, 正常の活動が妨げられる 4. 個々の患者でパターンや症状は固定的 5. 痛みには以下の症状の2つ以上伴う: a. 食欲不振 b. 嘔気 c. 嘔吐 d. 頭痛 e. 羞明 f. 顔面蒼白
6. 適切な評価後, 症状はその他の医学的状態では完全には説明できない
診断基準は診断前の少なくとも6か月間は満たす |
鑑別診断
・過敏性腸症候群(IBS):
過敏性超症候群では下痢や便秘がみられるが, 腹部片頭痛では下痢や便秘がみられることは少ない(約15%)1)
検査
・鑑別診断の除外のために血液検査や頭部画像検査(CT, MRI), 脳波検査が行われることがあるが, いずれも明らかな異常所見を認めない
治療
・トリガーを特定してそれを回避することが効果的な予防方法
・改善する方法としては安静, 睡眠, 鎮痛薬が知られている8)
・急性期の薬物治療としては鎮痛薬や制吐薬, トリプタン製剤が効果を示したとする報告がある
・急性期の薬物治療としては鎮痛薬や制吐薬, トリプタン製剤が効果を示したとする報告がある
・発作の初期では鎮痛薬としてアセトアミノフェンやイブプロフェンなどを用いることで発作が頓挫することがある
・予防薬としてはプロプラノロールやシプロヘプタジン, バルプロ酸が効果的であったと報告されている
予後
・腹部片頭痛は小児期に改善することが多いもの(60%程度)の, 成人期まで持続することはある・腹部片頭痛のある小児の54-70%はのちに片頭痛に移行するとしている
<参考文献>
1) Childhood periodic syndromes. Pediatr Neurol 2010; 42: 1-112) The prognosis of childhood abdominal migraine. Arch Dis Child 2001; 84: 415-8
3) Abdominal migraine: Prophylactic treatment and follow-up. J Pediatr Gastroenterol Nutr 1999; 28: 37-40
4) Abdominal migraine: Evidence for existence and treatment options. Paediatr Drugs; 2002; 4: 1-8
5) Abdominal Migraine: An Under-Diagnosed Cause of Recurrent Abdominal Pain in Children. Headache 2011; 51: 707-12
6) 小児周期性症候群. 脳と発達 2012; 44: 125-8
7) The International Classification of Headache Disorders 3rd edition
8) Prevalence and clinical features of abdominal migraine compared with those of migraine. headache Arch Dis Child 1995; 72: 413-7
9) Epidemiology of pediatric functional abdominal pain disorders: a meta-analysis. PLoS One. 2015;10(5):e0126982.
10) Childhood Functional Gastrointestinal Disorders: Child/ Adolescent. Gastroenterology 2016; 150: 1456-1468.
11) Prevalence of Functional Gastrointestinal Disorders in Children and Adolescents: Comparison Between Rome III and Rome IV Criteria. J Pediatr. 2018; 199: 212-216
改訂:
2018/8/16: 参考文献8を追加し, その分の内容を追加
2019/7/8: 参考文献9-11を追加. 診断基準をRome IVのものに変更
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