2018年2月1日木曜日

急性中耳炎における抗菌薬の治療期間 -第2版

急性中耳炎の治療期間について, 2歳未満の小児を対象とした2016年の代表的な論文を紹介したあと, 個人的に好ましいと思われる治療期間について簡単に考察しています.

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Shortened Antimicrobial Treatment for Acute Otitis Media in Young Children.
N Engl J Med 2016; 375: 244-56

治療期間を短縮の可能性を考慮してアモキシシリン・クラブラン酸(AMPC/CVA)の5日間投与と10日間投与を比較した二重盲検無作為化比較試験
・対象: 生後6か月から23か月で以下を満たしているの乳幼児
 ・肺炎球菌ワクチンを2回以上接種している
 ・3つの基準に基づいて診断された急性中耳炎(AOM)に罹患している
・以下の場合は除外された:
 ・鼓膜穿孔やその他の疾患(アモキシシリンアレルギーなど)がある
 ・過去96時間の間で1回以上抗菌薬が投与されている
・以下の2群で比較:
 ・5日間投与群: AMPC/CVA 5日間投与 → プラセボ 5日間投与
 ・10日間投与群: AMPC/CVA 10日間投与




結果

10日間と比較して5日間では治療失敗率が有意に高かった(34% vs 16%)
・6日目および12-14日目の平均症状スコアは10日間の方がよかった
・両群で再発率, 副作用, ペニシリン非感受性病原体の鼻咽頭定着率に有意差なし
・治療失敗率は
 ・週10時間以上, 3人以上の小児と接触している児
 ・両側の中耳炎のある児
 で有意に高かった




まとめ
・10日間で治療された患者と比較して5日間で治療された患者では治療失敗率が高かったが, 有害事象の明らかな減少はみられなかった




個人的考察

2013年に発表された日本の急性中耳炎診療ガイドラインでの抗菌薬治療の期間の項目では抗菌薬投与は5日間となっています(推奨度A)
 解説の部分では様々な研究が紹介されているものの, どのような経緯で年齢などを区別せずに統一的に5日間と設定したかは明確ではないと個人的には考えています.
 一方、2013年に発表された, 米国小児科学会が推奨する急性中耳炎における抗菌薬治療の期間は以下の通りです(Pediatrics 2013; 131: e964-99):
・2歳未満: 10日間
・2歳以上6歳未満: 7日間
・6歳以上: 5-7日間
また2016年に発表されたカナダの急性中耳炎ガイドラインでは
・2歳未満: 10日間
・2歳以降: 5日間
と期間が推奨されています(Paediatr Child Health 2016;21(1):39-44)

 上記のことから, 個人的には2歳未満の急性中耳炎患者(特に両側例)で抗菌薬治療を行う場合には10日間治療が好ましいのではないかと考えています. これは日本では治療失敗例に対して他所で経口第3世代セフェム系を処方されてしまうリスクも考慮した上でのことです.
 いずれにせよ, 特に10日間治療で有害事象のリスクが上昇しないかなどには引き続き検討が必要だと思われます.



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