2018年1月31日水曜日

小児におけるCK-MB測定の注意

クレアチンキナーゼとアイソザイム

・クレアチンキナーゼ(CK)はクレアチンリン酸とADPからクレアチンとATPを生成する酵素で, BサブユニットとMサブユニットの2つのユニットの組み合わせからCK-MM, CK-MB, CK-BB3つのアイソザイムが存在する.
 それぞれのアイソザイムは以下のような特徴がある:
 ・CK-MM: 骨格筋や心筋で認められる
 ・CK-MB: 主に心筋で認められ, 心筋が傷害されると上昇する
 ・CK-BB: ほとんどが脳で認められる
 それ以外でもマクロCK (免疫グロブリン結合CK)やミトコンドリアCK (ミトコンドリア内膜由来のCK)が知られている


CK-MBの測定方法

 CK-MB活性値は心筋傷害により上昇することから, 急性心筋梗塞などが疑われる場合に測定されることがある. CKアイソザイムの測定以外で, CK-MB」の検査項目があり, 単独で測定でき, かつ後者の方が速やかに結果を得ることができるが, この「CK-MB」はCK-MB活性値そのものを測定している訳ではなく, 以下のような原理で測定している:
1. 各アイソザイムのMサブユニットの活性を抗CK-M抗体で抑制
2. Bサブユニットの活性値を測定し, この値を2倍して得られたものをCK-MBの測定値とする

 ここでCK-BBの存在が問題になるのだが, 成人ではCK-BBはわずかに存在するのみであるため, CK-BBの活性の2倍が合算されてもわずかであるため, CK-MBに大きな誤差は生じない.


小児におけるCK-BB

・ところが, 成人と比較して小児ではCK-BBの活性値が高いことが報告されています1). また低年齢ほど高値傾向がみられています.
 以上より, CK-MBという検査項目で測定すると実際のCK-MB活性値よりも高値を示す可能性があります.
 小児では急性心筋炎などを疑ってCK-MBを測定することも考慮されるかと思いますが, 以上のような傾向があることに注意して解釈した方がよさそうです.


まとめ

・小児で「CK-MB」の検査項目でCK-MBを測定すると, 実際の活性値よりも高値となりえるため解釈には注意が必要.


参考文献
1) 外来患児を対象としたCKアイソザイム分画値の年齢に依存した変動について. 生物物理化学 1999; 43: 39-42

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