2018年1月27日土曜日

大泉門の大きさと閉鎖

・泉門は線維性の膜で覆われた頭蓋骨の間隙であり, 出生時には6つの泉門が存在する(ただし身体診察で触知できるのは大泉門と小泉門の2つのみ)
・大泉門は泉門のうちで最も大きいもので, 左右の前頭骨と頭頂骨に囲まれた部分

図のうち, Anterior fontanelの部分が大泉門(図は参考文献9から引用)




大きさ

・日本ではひし形の辺の中央での長さを縦横で測定する(縦横の平均値)方法(Elsasser)が一般的だが, 海外の文献や教科書では対角線を測定する(対角線の平均値)方法(Popich and Smith1))が用いられることが多いため, 海外の文献を参照する場合には注意が必要
・いずれの方法でも評価の正確性としては違いがないことが報告されている13)














Elsasser
・出生時の平均値は男児14.8mm, 女児13.9mm6)

Popich and Smith
・日齢1での大泉門の正常の大きさは0.6-3.6cmで平均2.1cm1)
 ・黒人ではやや大きく1.4-4.7cm5)
・出生時の大泉門の大きさは在胎週数が大きいほど広い傾向がある: ある研究では週数別の大泉門の平均面積は以下の通りだった12)  
 ・在胎週数 28-32週: 113.4mm2
 ・在胎週数 33-36週: 161.7mm2
 ・在胎週数 37-42週: 220.2mm2
・大泉門の大きさと頭囲や骨年齢との間で関連性はない3)
・大泉門の大きさは生後2か月までは拡大する2)4)




閉鎖

・大泉門の閉鎖は個人差が大きいが11)大泉門閉鎖までの平均時間は出生時の在胎週数に依存する
・男児は女児よりも早く閉鎖するかもしれない7)
・CTで解剖学的に評価した研究では, 大泉門は12か月までに21%, 18か月までで60%, 24か月までで89%が閉鎖していた2)
・日本人での触診での報告では12か月までに50%, 18か月までに80%, 24か月までに99%が閉鎖していた6)
・初期の大泉門の大きさは閉鎖時期の予測因子にはならない3)




大きな大泉門・閉鎖遅延

大きな大泉門
・明確な基準はないが, 以下の基準は示されている10)
 ・生後6か月以下: 5cm以上
 ・6-9か月: 4cm以上
 ・9-12か月: 3cm以上

原因
・頻度の高い原因: 軟骨無形成症, 先天性甲状腺機能低下症, Down症候群, 頭蓋内圧亢進, 正常亜型, 家族性大頭症(閉鎖遅延の場合), くる病9)




小さな大泉門・早期閉鎖

一般的には1歳から1歳半ころに閉鎖すると認識されており, 教科書には早くて生後9か月までに閉鎖することがあると記載がある14). 従ってこの時期よりも早くに閉鎖している場合に異常だと認識される場合がある. その一方で, 正常でも生後3か月には閉鎖する可能性があるともされており9), 実際, 正常でも3-5%の児は生後5, 6か月で閉鎖したことが示されている.2)
・早期閉鎖が疑われる場合には正常亜型の場合もあるが, 重要な原因である小頭症の可能性も考慮して注意深い頭囲のモニタリングが必要となる.
・大泉門が早い段階で小さいか早期閉鎖傾向にあっても, 正常であれば頭囲は正常な発育をたどると考えられる.

原因
・頻度の高い原因: 染色体異常頭蓋縫合早期癒合症, 先天感染症, 胎児アルコール症候群, 低酸素性虚血性脳症, 正常亜型9)


参考文献
10) ベッドサイドの小児神経・発達の診かた. 改訂3, 南山堂, 2009, p.46
11) Variation in fontanelle size with gestational age. Early Hum Dev 1999; 54: 207-14
12) Anterior fontanelle size in the neonate. Arch Dis Child 1975; 50: 81-3
13) Evaluation of fontanel size variation and closure time in children followed up from birth to 24 months. J Neurosurg Pediatr 2018; 22(3): 323-9
14) NELSON Textbook of Pediatrics 21th edition

改訂:
2018/11/15: 参考文献13追加, 参考文献9から図を引用
2019/12/6: 参考文献14追加, 14やその他の内容を参考に追記

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