2017年10月12日木曜日

初期に川崎病と診断されていた全身型若年性特発性関節炎


はじめに

・川崎病は主に小児で発症する原因不明の全身性血管炎による疾患である.
・川崎病では典型的な症例では特徴的な所見が揃うが, 一部で他の疾患との臨床像がオーバーラップする部分があり, 特に不全型や非定型の川崎病においてはその他の病気と鑑別が難しいこともある.
・川崎病と臨床像が似る可能性がある病気はいくつかあり, 主なものとしてはエルシニア感染症, アデノウイルス感染症, 麻疹, 猩紅熱, 全身型若年性特発性関節炎, リウマチ熱,  Stevens-Johnson症候群, 毒素性ショック症候群が挙げられる.
・全身型若年性特発性関節炎は, 典型的には発症時に強い全身性炎症所見を伴い, 数週以上にわたり高熱が持続し, 紅斑性皮疹や全身のリンパ節腫脹, 肝脾腫, 漿膜炎といった臨床像がみられ, 一部で川崎病と臨床像が重複する部分がある.

・今回の研究では, 初期に川崎病と診断されたが, 後に全身型若年性特発性関節炎と診断された症例の特徴について分析している.





初期に川崎病(KD)と診断され, その後全身型若年性特発性関節炎(Systemic-onset Juvenile Idiopathic Arthritis: SoJIA)と診断された患者について評価した後方視的研究
・Nationwide Children’s HospitalとPediatric Health Information SystemでKDとして治療された患者を対象とした
・研究対象期間: 2009-2013年
・KDと診断されたあと6か月以内にSoJIAと診断された患者(pKD/SoJIA)を特定した評価
pKD/SoJIA患者に関して文献的レビューを行った





結果

・KD患者が6745人特定され, 入院中に免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)が行われていた
・患者6745人のうち, のちにSoJIAと診断された患者は10人(0.2%)いた
・KDの診断後6週以内で, IVIGの反復投与はKD患者群においては21.4%の患者で行われていたが, pKD/SoJIA患者群においては50%で行われていた
 ・両群間で有意差はみられなかった
・pKD/SoJIA患者はKD患者と比較して白人優位であった(90% vs 46.8%)
pKD/SoJIA患者ではKD患者と比較してマクロファージ活性化症候群を合併する頻度が高かった(30% vs 0.3%)

これまでの報告のレビュー
・文献のレビューで15例のpKD/SoJIA患者が特定され, そのうち12例は不全型KDと初期に診断されていた
・pKD/SoJIA患者では結膜炎を認める頻度が低かった(3/15)
・発症時での平均発熱期間は13日
・47%の患者に心エコー上で冠動脈拡張がみられたが, 冠動脈瘤を形成した患者はいなかった




まとめ

・頻度は低いものの, KDと診断された患者の中にはSoJIA患者が含まれている可能性がある. 特にマクロファージ活性化症候群を合併した症例や不全型KDの症例では注意が必要だろう.




個人的感想

・川崎病は冠動脈病変を後遺症として残すリスクがあり, 早期の治療によりそのリスクが軽減されることから, 川崎病を強く疑った場合には川崎病の症状が揃っていない不全型の状態でも治療を開始することは少なくない.
・しかし, 川崎病の治療を開始したからといって必ずしも川崎病と確定してよいわけではなく, 特に川崎病の経過としてやや典型的ではない場合には他疾患の可能性も念頭に置いて診療を進めることが重要かと思われる.



改訂
2018/3/13: 一部追記

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