2017年8月31日木曜日

川崎病に対する免疫グロブリン静注にクラリスロマイシン内服を追加した治療

Clarithromycin Plus Intravenous Immunoglobulin Therapy Can Reduce the Relapse Rate of Kawasaki Disease: A Phase 2, Open-Label, Randomized Control Study.
J Am Heart Assoc 2017; 6: e005370


免疫グロブリン静注(IVIG)にクラリスロマイシン(CAM)を追加した治療を評価した日本での多施設オープンラベル無作為対照試験
・用語は以下のように定義した:
 ・relapse: 解熱後14日以内に発生した発熱
 ・recurrence: 解熱後14日以降に発生した発熱
・CAMは10mg/kg 分2 14日間 or 解熱後7日まで延長して投与した


結果

81人の患者が参加して, IVIG+CAM 41, IVIG単独40例に無作為に割り付けた
・患者は生後4か月から8歳までの範囲で, 登録時の発熱期間は4-8日であった
発熱期間は両群で有意差はなかった
・その他, 両群では以下の点では違いはみられなかった:
 ・追加治療が必要であった症例の割合
 ・4週での冠動脈異常の発生率
 ・4週での右冠動脈近位, 左主幹冠動脈, 左前下行枝近位のz score
 ・1, 4週での臨床検査結果
IVIG+CAM群ではIVIG単独群と比較してrelapseの割合が有意に低かった(12.5% vs 30.8%)
 ・relapseの発生率と冠動脈異常の発生との間の関連性は発見できなかった
IVIG+CAM群ではIVIG単独群と比較して平均入院期間が有意に短かった(8.9 vs 10.3)
grade 3, 4の有害事象は両群で発生率に有意差はなく, 重篤な有害事象はみられなかった



まとめ

・IVIGにCAMを追加するとrelapseは減少して入院期間は短縮したが, その他は有意な違いはみられなかった



個人的感想

"relapse"の中には以下のものが含まれていると思われます:
・川崎病の治療後に再度発熱がみられ持続したもの(追加治療を要する)
・川崎病の治療後に一過性に発熱がみられたもの

 後者は他のある報告では"リバウンド熱"と呼ばれているものだと思われます(小児感染免疫 2016; 28(3): 139-43)
 同報告やその他の報告では, 川崎病症例の19-25%と低くはない確率で観察されており(Progress in Medicine 2009; 29: 1695-700), 確かに実臨床でも時折川崎病治療後(IVIG)に解熱して, その後一過性に微熱がみられることはあります.
 IVIG治療後に解熱して再度体温上昇がみられたものを広く"再燃"とする解釈することもでき, 再燃であると判断して追加治療を行うケースもあるかと思います.

 ただ, この"リバウンド熱"を認めた症例(n=56)で冠動脈病変の後遺症を残した症例はいなかったとする報告があり, 冠動脈病変発症のリスクではなさそうな感じです.
 そうなると, 今回のrelapseは有意に減少したが冠動脈病変の発生率に有意差はなかったのもうなづけますし, relapse症例では追加治療は必要なさそうな感じではあります.
 ただ, これらはまだ十分な研究が行われていないのが現状であるため, さらに質の高い研究が求められていると思います.



改訂
・2018/3/1: 個人的感想の内容を一部追記

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