2017年6月29日木曜日

乳児の生理的貧血

 新生児では生後1週間以内にHb値の低下が始まり, その後6-8週間持続し, その結果として生じるものが乳児の生理的貧血



病態生理


・新生児では出生後に血中酸素供給量が増大するため, エリスロポエチン(EPO)の産生が低下, 赤血球生成が抑制される
・組織酸素必要量が酸素運搬量よりも多くなるとEPO産生が増加して, 赤血球産生が再開される
 ・生後8-12週頃に再開され, この時点でHb値は11g/dLとなる
 ・Klingらの報告では, EPOは生後1か月で最も低く, 生後2か月で最も高かった5)
  ・EPO値はヘモグロビン値に反比例した
  ・EPO値は網状赤血球数に比例した
・外因性エリスロポエチンへの反応性は正常




臨床経過

O’Brienらの報告での生理的貧血の最低値2):
 ・正期産児: 生後6-8週で9.5-10.0g/dL
 ・早産児: 生後3-7週で6-7g/dL
・日本人におけるヘモグロビン値の基準値3):
 ・生後1か月: 9.0-13.5g/dL
 ・生後3か月: 9.5-13.7g/dL
・綛谷らの新生児621例での1か月検診時の血液検査を検討した報告では以下の特徴がみられた4):
 ・出生時体重が低いほどHb値が低い傾向がある
 ・Hbの違いによりMCV, MCHの値に差はなかった
 ・Hb値が低い群ほどWBC値が低い傾向があった




早産児

・早産児ではHb値低下の程度はより強くなり, 急速となる
7-9g/dL程度まで低下する
・早産児では貧血の程度に対してEPO値が低値となる
 ・機序:
  ・胎児期ではEPOは肝臓で主に産生され, 肝臓は腎臓よりも低酸素に対する酸素センサ   ーの感受性が低いため, EPOが十分に産生されない
  ・早産児ではEPO代謝が促進されていることがある




参考文献
1) NELSON Textbook of Pediatrics 20th edition
2) Physiologic anemia of the newborn infant. J Pediatr. 1971; 79(1): 132-8
3) 小児の臨床検査 -病態生理に基づく選び方・考え方- 小児科学レクチャー 2013; 3(2)
4) 生後1カ月児における末梢血像. 日本小児血液学会雑誌. 1991; 5(4): 378-82
5) Serum erythropoietin levels during infancy: Associations with erythropoiesis. J Pediatr 1996; 128(6): 791-6
6) PEDIATRIC SECRETS 5th edition

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