病態生理
・新生児では出生後に血中酸素供給量が増大するため, エリスロポエチン(EPO)の産生が低下し, 赤血球生成が抑制される
・組織酸素必要量が酸素運搬量よりも多くなるとEPO産生が増加して, 赤血球産生が再開される
・生後8-12週頃に再開され, この時点でHb値は11g/dLとなる
・Klingらの報告では, EPOは生後1か月で最も低く, 生後2か月で最も高かった5)
・EPO値はヘモグロビン値に反比例した
・EPO値は網状赤血球数に比例した
・外因性エリスロポエチンへの反応性は正常
臨床経過
・O’Brienらの報告での生理的貧血の最低値2):
・正期産児: 生後6-8週で9.5-10.0g/dL
・早産児: 生後3-7週で6-7g/dL
・日本人におけるヘモグロビン値の基準値3):
・生後1か月: 9.0-13.5g/dL
・生後3か月: 9.5-13.7g/dL
・綛谷らの新生児621例での1か月検診時の血液検査を検討した報告では以下の特徴がみられた4):
・出生時体重が低いほどHb値が低い傾向がある
・Hbの違いによりMCV, MCHの値に差はなかった
・Hb値が低い群ほどWBC値が低い傾向があった
早産児
・早産児ではHb値低下の程度はより強くなり, 急速となる
・7-9g/dL程度まで低下する
・早産児では貧血の程度に対してEPO値が低値となる
・機序:
・胎児期ではEPOは肝臓で主に産生され, 肝臓は腎臓よりも低酸素に対する酸素センサ ーの感受性が低いため, EPOが十分に産生されない
・早産児ではEPO代謝が促進されていることがある
参考文献
1) NELSON Textbook
of Pediatrics 20th edition
2) O'Brien RT, Pearson HA. Physiologic anemia of the newborn infant. J Pediatr. 1971;79(1):132-138.
Link: Pubmed
3) 小児の臨床検査 -病態生理に基づく選び方・考え方- 小児科学レクチャー 2013; 3(2)
4) 生後1カ月児における末梢血像. 日本小児血液学会雑誌. 1991; 5(4): 378-82
5) Kling PJ, Schmidt RL, Roberts RA, Widness JA. Serum erythropoietin levels during infancy: associations with erythropoiesis. J Pediatr. 1996;128(6):791-796.
6) PEDIATRIC
SECRETS 5th edition
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