J Pediatr 2017; 184: 199-203
テキサス小児病院の救急外来を受診した新生児における発熱を伴う尿路感染症(UTI)で細菌性髄膜炎の合併率を分析した後ろ向き横断研究
新生児における発熱では, 特に重症細菌感染症の可能性を考慮して検査や治療を行う必要がある.重症細菌感染症の中ではUTIの頻度がもっとも高い1). UTIにおいて菌血症の合併率は年齢と反比例することが報告されている2), 別の報告では菌血症合併症例と非合併症例では臨床的に差がほとんどみられないことが示唆されている3).
菌血症は細菌性髄膜炎のリスクとなりえるため, 新生児のUTIでは細菌性髄膜炎の合併を考慮する必要があるかもしれない.
方法
・研究期間は2005年1月から2013年6月30日・以下を満たす小児が対象となった:
・日齢30未満
・臨床検査で確定したUTI
・腰椎穿刺で髄液が採取されている
・以下を満たす場合をUTIと確定診断:
・膀胱穿刺で得た尿検体での培養で菌が発育
・カテーテルで得た尿検体での培養で50000CFU/mLを超える菌が発育
・カテーテルで得た尿検体での培養で10000CFU/mLを超える菌が発育し, 尿検査ではUTIを示唆する検査結果
・UTIを示唆する尿検査結果は以下のように定義:
・白血球エステラーゼ陽性
・WBC≧5/HPF
・細菌性髄膜炎の定義:
・確定的な細菌性髄膜炎: 髄液培養でいずれのかの菌が発育
・疑わしい細菌性髄膜炎: 髄液でウイルスは特定されず, 抗菌薬の事前投与が行われており, 髄液細胞数増加(>20WBC/mm3)あり
結果
・基準を満たす児は342人存在し, そのうち最終的に236人が分析の対象となった臨床像
・救急外来での評価時に2.1%ではショックの徴候があった
・5.9%(14人)の児では腰椎穿刺前に抗菌薬の治療が行われていた
・6人は腰椎穿刺の1時間以内, 3人は2時間以内に抗菌薬が投与されていた
・尿検査は94.1%の児で陽性
・菌血症は9.7%(23人)の児で認められた
・23人中20人(86.9%)では尿培養と血液培養で同じ菌が発育した
腰椎穿刺・髄膜炎との関連性
・腰椎穿刺の試行回数に関するデータは186人(78.8%)の新生児で利用できた
・腰椎穿刺試行回数の中央値は2回(範囲: 0-8回)
・疑わしい細菌性髄膜炎は2例(0.8%)あった
・いずれも発熱1日目で受診して抗菌薬の事前投与が行われていて, 髄液は血性
・入院時にはいずれもwell-appearing
・血液培養や髄液培養では菌は発育せず
・確定的な細菌性髄膜炎の症例はなかった
・ウイルス性髄膜炎/髄膜脳炎は3例あった
・2例ではエンテロウイルス, 1例では単純ヘルペスウイルス(HSV) 1型が検出された
まとめ・個人的感想
・発熱を伴う尿路感染症の新生児で細菌性髄膜炎を合併する可能性は低いかもしれない.
・元気にみえて尿路感染症が疑われる新生児において腰椎穿刺が回避できる可能性が示されたかもしれないが, 今後それらの可能性についてはさらなる評価が必要だろう.
参考文献
1) Management of febrile neonates in US pediatric emergency departments. Pediatrics. 2014; 133(2): 187-95
2) Bacteremia and meningitis among infants with urinary tract infections. Pediatr Emerg Care. 1995; 11(5): 280-4
3) Bacteremic urinary tract infection in children. Pediatr Infect Dis J. 2000;19(7): 630-4
改訂
2018/11/22: 序文を追記し, リンクを整備
0 件のコメント:
コメントを投稿