2020年2月29日土曜日

小児における市中肺炎回復後の経過観察時の胸部X線所見についての分析

背景

・市中肺炎は小児においてよくみられる下気道感染症の1つである.
・市中肺炎は通常発熱や呼吸器症状などの臨床症状と, 胸部X線などの放射線学的所見に基づいて診断される.
・小児の合併症のない市中肺炎では通常胸部X線写真における異常所見に基づいて診断される.
今回の研究では市中肺炎で入院した児における, 退院後の胸部X線の役割について分析している




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Virkki R, Juven T, Mertsola J, et al. Radiographic Follow-Up of Pneumonia in Children. Pediatr Pulmonol 2005; 40(3): 223-227.

方法

・フィンランドでの3年間の前向き試験
・対象: 1993年1月1日から1995年12月31日まで市中肺炎で入院した児296人のうちで, 基準を満たした196人
・肺炎の診断基準: 以下のいずれもが同時に存在することに基づいて診断された:
 ・胸部X線での浸潤影
 ・発熱(>37.5 ℃) and/or 呼吸器症状
・入院時に正面・側面の2方向で胸部X線撮影を行い, X線写真は後ろ向きに3人の小児放射線科医によって個別で読影された
・退院後3-7週でも胸部X線撮影を行なわれ, X線写真は同様に3人の小児放射線科医が読影された
・退院後8-10年での状態について診療記録の分析とアンケートを行い分析した
 ・前者は196人中182人, 後者は196人中195人に対して行なった





結果

・児の年齢の中央値は2.4歳であった
・可能性がある病因は84%で特定された:
 ・細菌性が20%, ウイルス性が33%, 細菌性/ウイルス性の混合が31%であった
 ・頻度の高い病原体としては肺炎球菌(37%), RSウイルス(31%), ライノウイルス(18%)が挙げられた

・退院後3-7週での胸部X線で30%の児に異常所見がみられた:
 ・主な所見: 単独の間質性浸潤影(67%), 無気肺(47%), リンパ節腫脹(28%)
・特定の病原体や血液検査所見と, 経過観察時でのX線所見の間で明らかな関連性はみられなかった
経過観察時での胸部X線所見の異常がみられた児で治療が変わった児はおらず, その後胸部X線撮影は行われなかった.

・8-10年後の経過観察では, 194人で分析が行われた
・26人が新たな肺炎に罹患しており, 7人が喘息, 6人が異なる基礎疾患に罹患していた.
 ・いずれの疾患も経過観察時の胸部X線所見と明らかな関連性はなさそうであった.





まとめ

・肺炎で入院した児において, 退院後3-7週の胸部X線でも30%で異常所見がみられた
・退院後3-7週の胸部X線での異常所見の存在はその後の治療方針や長期的な予後に影響はなさそうであり, 問題なく回復した市中肺炎での経過観察においてルーティンでの胸部X線は不要であろう.





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・肺炎が疑われた児において, 胸部X線の陰性的中率は極めて高かった(Susan CL, et al. Pediatrics 2018)

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