2019年10月15日火曜日

2015年の熱性けいれん診療ガイドラインの発表前後での診療方針の変化

はじめに

・熱性けいれんは小児で最もよく経験されるけいれん性疾患である.
・日本では日本小児神経学会が2015年に熱性けいれん診療ガイドラインを作成している.
・熱性けいれんはよく経験される疾患であるものの, 日本ではガイドラインが1998年に発表されており(「熱性けいれんの指導ガイドライン」), それ以降長い間作成されてこなかった..
・2015年に新たな熱性けいれんに対するガイドラインが作成されたことで, ガイドラインに基づいた診療が行われ, その結果として診療方針に変化がみられたと考えられる.
・今回の研究では, 2015年のガイドライン発表前後での, 主に単純型熱性けいれんに対する診療方針について分析している.




Tanaka M, et al. The effect of the guidelines for management of febrile seizures 2015 on clinical practices: Nationwide survey in Japan. Brain Dev 2020; 41(2): 28-34.


日本における熱性けいれん診療ガイドラインと診療方針の変化について分析した研究

方法

・2016年9月に全512の小児科研修施設と全47都道府県の小児科医会にアンケートを送付した
 ・研修施設では幅広い年齢の3人の小児科医が回答した
 ・都道府県別の小児科医会は, 会長が10 人の開業医を選別した

・アンケートに関しては2パートに分けられた
 ・1つ目は熱性けいれん診療ガイドライン2015について知っているか・使用しているかについて
 ・2つ目は2013-2014年と2016年のそれぞれにおける熱性けいれんの管理方針について
・アンケートでは以下のような質問を行った:
 ・救急外来での初回単純型熱性けいれんの小児に対する腰椎穿刺, 血液検査およびジアゼパム坐薬の使用
 ・2, 3回の単純型熱性けいれんの既往のある2歳の小児における有熱性疾患罹患時の予防的ジアゼパム坐薬の使用
  ・再発の予測因子は不明の設定としている




結果

・1327 人(66.2%)から回答があった (そのうち977人が研修施設所属)
 ・1327人中1002人(75.5%)が小児科専門医であった
・1225人(92.4%)が熱性けいれん診療ガイドライン2015について知っていた
・726人(54.7%)が医療機関において熱性けいれんの患者の管理はガイドラインに基づいて行われていると回答した


管理方針の変化
・2013-2014年と2016年で, 救急外来での初回単純型熱性けいれんの小児に対する腰椎穿刺, 血液検査およびジアゼパム坐薬の使用割合はいずれも低下していた: (2013-2014年 → 2016年)
 ・腰椎穿刺: 2.0% → 1.2%
 ・血液検査: 61.3% → 53.1%
 ・ジアゼパム坐薬: 51.9% → 36.7%

・それぞれの回数の熱性けいれんのエピソードを持つ児に対して, ジアゼパム坐薬の使用を”強く推奨する”, あるいは”推奨する”と回想した割合は, 2013-2014年と比べて2016年にかけて低下していた:
 ・過去2回の既往あり: 45.7% → 31.0%
 ・過去3回の既往あり: 82.4% → 65.0%




まとめ

・熱性けいれんガイドライン2015は実臨床における熱性けいれんの管理に影響を与えているようである
・ジアゼパム坐薬の適応は過去のエピソードの回数のみでは推奨していないものの, 3回以上のエピソードがみられた患者に対しては使用される頻度は低くなかった




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補足
ジアゼパム坐薬(ダイアップ®)の適応
 熱性けいれん診療ガイドライン2015では, ジアゼパム坐薬の以下の適応基準を推奨している:
 遷延性発作(持続時間 15 分以上) または
または
次の i~iv のうち,二つ以上を満たした熱性けいれんが二回以上反復した場合:
i. 焦点性発作または 24 時間以内に反復する
ii. 熱性けいれん出現前より存在する神経学的異常,発達遅滞
iii. 熱性けいれんまたはてんかんの家族歴
vi. 12 か月未満
v. 発熱後 1 時間未満での発作
iv. 38℃未満での発作
 また, 地域の治療体制や家族の不安・心配も考慮するとしている.

 この基準に基づけば, 単純に熱性けいれんのエピソードが多いだけでは推奨された適応基準を満たさないことになる.
 もちろんけいれんのエピソードが多いことを理由にして予防的なジアゼパム坐薬の処方が考慮されることもあるかもしれず, それがすべて否定されるわけではない. 重要なことは回数のみで基準を作ってルーチンで予防的にジアゼパム坐薬を処方するのではなく, 適応基準を含めた総合的な判断のもとで個々に処方するかどうかを判断することの方が望ましいということである.

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